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地域医療研修医のための脳外科病棟カンファ1回目,2018年8月7日

DarkoStojanovic / Pixabay

Long long prologue: 背景その1

脳外科医師が2018年4月から一人になって,毎日バタバタしている.以前は3名いたのが,若い一人が専門疾患のオペをしに国内留学.もう一人も高齢でリタイアで常勤を辞めるとのこと.それで自分が2016年10月に赴任してきたと言うことになっている.自分が来たことで,もう一人の脳外科医は自分の最後の希望を叶えるために,私が来たのを機会にこの4月から出て行った.一人残されました.一人でも困らないことは沢山ある.慢性硬膜下血腫などは,もともと一人でどこの病院も手術をしている.また周囲の開業医,病院,住人も「一人になったら,もう手術はしない」と普通に忖度する.ということで手術症例は全く来なくなった.かわりに認知症,てんかん,頭痛患者の紹介が増えた.神経内科は週に1回なので間に合わない.一人になってわかることは,一人では考えなしに次から次へと急いで仕事をこなしてしまい,言語化することを飛ばしてしまう.要は当たり前だが,疾患について他の医師と話をしなくなる.他の脳外科医師がいないのだから,お互いに検討したりはしない.
段々,最新の知識も入らなくなる印象.これでは,困る.何とかしないと.

背景その2

今の病院は,初期研修医の「地域研修」の病院.毎月に2,3名が研修にくる.ということで,若い研修医,文字通りの卒業2年目の研修医がいてくれる.
また「地域枠」の医師派遣病院にもなっており,3年目-5年目の医師がいてくれる.
これがもう一つの背景.彼らは,主に「内科」研修をしている.
ということで,突然,この7月ぐらいから思い立ったことがある.
彼らに一緒に手術にはいってもらって,脳外科の症例検討会も行えば,
彼らの知識も増えるし,こちらも仕事のリズムもできる.
ひとりで黙々と大量の仕事をする間の,よい気晴らしchange of paceになる.
自分の知識を披露する場所でもあるし,初期研修医2年目の医師には,将来脳外科,神経内科になるつもりの無い医師にも必要な知識を提供してあげる企画.

大学の教授に聞くと,「地域枠」の研修は内科系の研修ばかりなので,
なかなか脳外科に興味を持ってくれず,ましては脳外科に入ることはまれ.

それでは,脳外科に入る人がさらに減る.
自分には脳外科勧誘の意図はないが,
彼らの勉強になれば,自分にも達成感がある.
Teaching is learning twice です.

めでたい第一回カンファ情報

第一回脳外科カンファ.
2018年8月7日16時半から始まった脳外科カンファレンス

症例1例目:80才代女性,中大脳動脈閉塞

左上下肢不全麻痺,MRIでは右中大脳動脈のM1での閉塞.
普通は広範囲の脳梗塞になるのに,この人はほとんどなっていない.
心原性でもない.「この6月のMRI では脳梗塞はなかった」とのこと.
そのMRIをとりよせると,今回の閉塞の部分は,途切れる直前のような狭さ.
答えは,「徐々に狭くなっていくので,
その代わり前大脳,後大脳動脈から側副血行路が発達したから」
治療法は,「抗凝固療法」ではなく「抗血小板療法」になる.
落ちは,入院後1週間目のMRAでは,右中大脳動脈は再開通していたこと.
しかも,出血性梗塞にはなっていなかった.まあ,最初の症例提示.
抗凝固療法と抗血小板療法の適応の違いの説明.

症例2例目:90才代女性 慢性硬膜下血腫

7月はじめに薄い慢性硬膜下血腫があったが,体調不良になって食事はせず,
ワーファリンはじめ薬だけはちゃんと飲んでいて,PT-INRが急激に上昇.
ワーファリンは食事量が減ったら,血液中の蛋白と結合しないフリーのものがふえるのか
急激に効果を発揮する.
ここでの肝は,当日手術ならPPSB-HTか,今ならケイセントラになる.
第10因子コンプレックスである.
翌日の手術になったので,この症例にはK2を点滴した.
翌日のPT-INRは1.46であったので,なんとか手術できた.
話のネタとしては,K2は一本80円,PPSB-HTは32000円.
400本使える計算.だからと言ってK2の効果は,ワーファリン自体に拮抗して不活化することで,肝臓が2,7,9,10凝固因子を作り始めて効果が出てくるまで3時間はかかる.
それが大きな違い.知っている人には常識.
3時間はかかるとDIにも記載がある.
と言う説明をした.
tPAの使用でもPT-INRは1.6以下だったと思うが,手術の時はいくらでゴーサインか?
そんな話をしました.

症例3例目:60才代女性 群発頭痛

3日前から体調不良で他院入院,その時は頭痛というよりは熱中症のような症状.
脳MRIは全く問題なしであったよう.
それが退院して2日目には,朝9時前に激しい頭痛で救急搬送された.
話を聞くと,「死にたいほど痛い.ズキンズキン痛い」と暴れる.
興奮している.また,流涙と鼻水がある.
その部分のみなら,普通に「群発頭痛」とわかる.
年齢と発症時間帯が全く教科書的ではない.
まあ,酸素10リットルとイミグランの皮下注を準備してもらった.
なんと酸素を10リットル投与している間に,イミグランを皮下注する前に
頭痛が雲散霧消に消えてしまった.そしてイミグランの注射で,
ケロリンと消えてしまった.
それで,研修医に説明のポイントは,群発頭痛には高流量の酸素が必要だが
どれぐらいの量が必要かということ.ガイドラインでは6-8リットル/分が必要.
中途半端に酸素を行くのは効果が無いので危険.

それと予防薬は片頭痛とは全く異なる.
それはヒスタミンとセロトニンの違いというか
レセプターの違い.
ワソランだけが二重盲検の検査でも有意に有効.
1日9錠と量が多いので,日本ではそこまで投与できにくい.
5錠程度をまず,開始量に自分はしている.
研修医にはその程度の説明と
さらに激しい頭痛でくも膜下出血と鑑別すべき疾患はなにか?
三叉神経第1枝の帯状疱疹,緑内障の発作などに加えて群発頭痛も入りますよ.
さらには,群発頭痛は1000人に1-4人で男性が4倍.30-40才代が多い.
名前の通り「群発」するが,
「ある時期,群発したら,そのほかの季節は出ない」など一般的な説明をした.

カンファレンスは30分の予定なので,時間が来て一回目のカンファレンスは終了.
自分は,いくらでも説明できるが一回目は終了.

まあ,これもネタとして毎回載せていく予定.
初期研修医は2名.8月は盆休みがあるので,後2回.

 

 

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