サイトアイコン Youは何しに真庭へ

研修医のための脳外科カンファ 24回目 2019年2月12日

DarkoStojanovic / Pixabay

本日の症例1 50才代 左前頭葉海綿状血管腫

7,8年前に激しい頭痛があった.1週間でそれは軽減.
その後,普通の生活.
偶然,脳ドックで脳MRI を撮ると,左前頭葉に陳旧性の出血瘢痕がある.
要はT2☆で真っ黒に写っている.
造影MRI を撮ってみると,内部がタマネギ状に増強される.
一見すると,海綿状血管腫である.
AVMや静脈血管腫ではない.
ということで「偶然発見された,過去に出血していた海綿状血管腫」ということ.
1.5 cm程度で脳表直下にある.
たしか,出血していて偶然見つかった海綿状血管種は,再出血率は年間4-7%とか,
多いものでは,15%/年などがある.
未出血で見つかった海綿状血管腫の場合は出血率は1%/年未満だったはず.
そんなこんなで,どうするかはすぐには決定は困難だが,出血の血腫壁の中に囲まれているのでどうか.増強されると言うことは血流は入っているので,どうするかである.
無理に,緊急で手術する必要はないが,年齢との兼ね合いであろう.
手術自体は,複雑なものではないが.

本日の症例2 50才代 軽い頭痛のくも膜下出血

数日前に,頭痛で救急搬送された.歩いて帰宅.
翌日も頭痛がひかず受診.
最後は,紹介状をもって脳外科受診.
典型的なマイナーリークの症例.
大きなくも膜下出血になる数日から3時間前にマイナーリークのある人は30%はある.
そのときに見過ごすと,数日後は脳血管攣縮がくるので,頭痛だけでなく麻痺がくる.
全く画像を撮らずに,帰宅させるのは非常に危険.
少量のマイナーリークの場合,CTでも数日でwash outされてしまい,CT画像では,わからなくなる.6日目でも写っていれば,わかる.
マイナーリークで初診で診断が着かなかった比率は,日本でも米国でも報告では,7-10%程度である.初診でわからなかった統計なので,「専門病院」や,脳外科の医師が最初に見た場合の見落としの率ではない.研修病院で,なおかつ救急救命センターなら,教育的見地からも初診時にCTを撮るであろうが,通常の地域医療の病院なら,意識清明,会話も普通,麻痺もなし,もともと頭痛持ちなら,内科医師は鎮痛剤だけで帰宅させるであろう.
その後,大きなSAHになれば致死的になる.
MRA(MR脳血管撮影)では動脈瘤をみとめて,FLAIR画像でもSAHが無い症例で,破裂かどうかわからない例では,徹底的に調べるのなら腰椎穿刺である.
いままで2例経験したが,きつい頭痛+MRA(MR脳血管撮影)では動脈瘤を認める.しかしCTでもMRIでもSAHがあるようには見えない.
そのときの腰椎穿刺では,1例は薄いピンクの髄液が延延と出てきて,SAHと判明.そのまま手術となった.
もう一例は,少し黄色い感じの髄液であった.当日に2例とも手術になった.
診断が遅れた場合の大きな問題は,脳血管攣縮である.
日本の教科書では4-14日目に起きると記載されている.米国の教科書では,5-10日目と書いてある.まあ,米国はメインの期間を記載.日本は安全域を広く取るところなど,すべての部分に考え方の違いを感じる.SAHで,5日目から7日目に発見された場合で,MRA(MR脳血管撮影)ですでに脳血管攣縮を起こしていると,まだdiffusion 3方向でもFLAIRでも脳梗塞になっていない場合でも,治療法に難渋する.
一般的には,開頭して血管を触ると攣縮が増強してしまう.
今の方法なら,血管内手術でとにかくコイルで破裂しないようにする.そして腰椎ドレナージを留置.そうすれば,トリプルHも出来る.
今も使われる,hypertension, hypervolemia, hemodilutionの治療法が可能になる.
血管内治療ができない時代は,2週間待機してから開頭ネッククリッピングでした.

本日の症例3 80才代 傍矢状同部髄膜腫

元気,明け方,起きてトイレに行こうとしたらフラフラした.
開業医では,寒かったからかと言われた.頭位変換性めまいが出たように思えた.
CTでは骨破壊を伴った前頭部の傍矢状洞部髄膜腫.
SSS(上矢状洞)に癒着というか一部浸潤.
手術を希望とのことだったので,15年保証なら可能と説明.
ナビを用いて,正中から半対側も骨をはずすべく,SSSをきれいに温存して
骨片を除去.正中則はSSSがあるので取り過ぎない.後方は運動量があるので,取り過ぎない.骨は除去しえチタンプレートでカバーした.
15年は持つと思うが,もし大きくなってきたら,後方には定位放射線療法をそれば良いであろう.SSSのところは浮腫になって多少は腫れるが,余裕はある.

 

 

モバイルバージョンを終了