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地域医療研修医のための脳外科病棟カンファレンス9回目,2018年10月16日

DarkoStojanovic / Pixabay

10月8日から14日まで留守にしていたので,
新しい症例は,あまりない.

今日の症例1 90才代 多発外傷

転倒して頭部打撲.CTでは外傷がいっぱい.
硬膜外血腫,外傷性くも膜下出血,
後頭部の両側急性硬膜下血腫,前頭葉脳挫傷とCTではいっぱい.
それでも全部が少量なので,意識も清明.
それ以外にも,CTでは見えないが,
おそらくMRIでわかる病変がある.
それが,自分の不在の時に来て,他院へ紹介された.
無事,本日,転院してきた.
MRIを撮ってみると,慢性硬膜下血腫になりつつあり.
自分があると想定していた病変はT2☆でも微小出血は無し.
要は,「瀰漫性軸索損傷」は無かった.
話の内容としては,CT時代ではわからなかったものが
あるに違いないと考えていた.
大昔?は脳圧も上がらないのに,予後不良の一群があると言われていた.
CTだけでは,それだけの予後不良の原因がわからなかった時代があった.
それが,軸索損傷だったと判明したのが1990年以降.
その後は,MRIの普及で,普通に微小出血がわかりだした.
顕微鏡ではaxon ballとか微小出血など多彩な病理所見も判明して,
時代が進んだというお話.

今日の症例2 40才代 脳脊髄液減少症の治療後

脳脊髄液が減少していれば,モンロー・ケリーの法則で,代償的に硬膜の静脈が拡張する.
それが造影剤での硬膜の円蓋部,大脳鎌,テント,斜台,頚髄上部の硬膜,下垂体などの増強効果に繋がる.
静脈が拡張するので,造影剤で増強される.
髄液の漏出がとまれば,その状況はいつ頃解消されるのか.
8日目の造影MRIでは,全く変化なし.
それが,23日目には,ほとんどの部位の増強効果がほぼなくなっているか,
わずかに残存.
症状も改善しているので,もし漏れているとしてもその時は,
考えられる場所は分かっているので,一旦退院になりました.
硬膜外自己血注入直後に,急激に頭痛が軽減したのは
「風船効果」と呼ばれるもの.
一時的に上方に脳脊髄液が上がって,頭痛が軽減.
その後,注入した血液が分解してしまい,頭痛が再燃.
しかし癒着して漏出した部位をふさいで,徐々に改善ということが起きたと
「見てきたような」理屈でした.

今日の症例3   70才代 神経膠芽腫

アバスチンの効能と副作用について.
好中球の減少などはどの,薬にもある.
後は高血圧.
自分が見てきた副作用の時期は,
使用して「2-4週間」後に採血結果も悪化するし,
食欲も落ちる.
日本では,予後はこの薬が加わって,
2-3ヶ月以上予後が伸びたなどの結果はあるが,
大半の報告は,予後は伸ばしていない.
自分は 10 mg/kg を2週間に一回か,
15mg/kgを3週間に1回と書いてあるが,
その使い分けは,あまり考えていなかった.

維持療法として,15 mg/kgを3週間に1回のほうが正しいような.
もう少し,この部分はお勉強が必要.

医学的なことよりも,イーケプラが200円/1錠なので,
施設に移動するときにはアレビアチン20円/1錠に変えてくださいといわれて,
肝機能障害になったほうが,やるせない気持ちになる.
結局,他の薬に変えないといけないし.

麻痺側の下肢に深部静脈血栓症ができて,エリキュースで溶かして,
再発予防量の量に減量しました.
しかし,一錠250円のエリキュースから
一錠10円のワーファリンに変更してから,来てくださいと言われた.
しかし,行った先で,PT-INRの値を見ながらワーファリンの量の
コントロールをしてくれるかというと,
そんなことは,「全く」無い.
それっきりです.

こちらのしないといけないことは,脳腫瘍の予後改善もさることながら,
患者さんが移動した施設が,「赤字にならない様に」気を配ること.
「介護医療院」という,新しい分類の施設も急激にできている.
そこから医療施設に一度受診したら,
赤字になるぐらいの介護保険を使う施設と理解している.
採血も,まずしないことが基本.

脳腫瘍の患者さんから,地域医療の厳しさを教えてもらいました.

 

 

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