この日はヘロヘロでした.
9月10日(月曜日)に正味9時間25分の手術をした.
おそらく,今の病院で,出来る最大,最長の手術でしょう.
22時には平日別荘(アパートの別称)に帰れた.
朝から,予定外の外来,術後の指示など
あれもこれも大変.
それでも律儀な自分は,火曜日の16時半から「脳外科カンファレンス」をして,
症例を2例提示しました.
研修医の先生は,途中で一人は病棟に呼ばれて,もう一人は風邪引いて,
私の話を聞いて,すぐ早退.
こちらも前日の手術に加えて,
昼すぎには別の急患が入院してきてヘロヘロ.
症例10 70歳代女性 脳脊髄液減少症からの慢性硬膜下血腫
行動異常で受診.
CTをみると,左の大きな慢性硬膜下血腫.
しかしよく見ると,右側に脳挫傷?
両側テント下にも血腫??
くも膜下出血もありそう.
よくわからない画像.
当日に左穿頭洗浄術.
症状は改善.しかし,多発の頭蓋内出血の原因は不明.
転倒などはしてない.外傷なら,かなりの外力がないと
ここまで多発の所見を示さない.
本人は一ヶ月前から頭痛.
右前頭葉に脳挫傷?皮質下出血あり.
・・・・・・・
それは海綿状血管腫あるいは,静脈血管腫などか?
造影MRIをとってみた.
なんと硬膜全周,テントが増強される.
脳脊髄液減少症なら,話はすべてあう.
普通のMRミエログラフィーを撮ってみた.
C1/2から漏出しているような.
さらに自分の開発したCTMRIダブルミエログラフィーをやってみた.
それまでに持続点滴をしていたためか,漏出部位がない.
まあ,また造影MRIを撮ってみる.
症例11 2回目 右聴神経鞘腫
手術直後,
術前のABRは,左右同時刺激で,右1,2波は全くでない.
3波からは右も左もでる.
ABRは,1,2波は末梢神経.3波になると橋の台形体にはいる.
台形体は左右が連絡している.そこからは両側を上行し,
5波は内側膝状体からの電気的活動.
まあ,初期研修医の先生に話しても,まず理解は無理でしょう.
しかし,手術も「安全,安心」に心配りができていないと,
今時のものではない.
手術にあわせて,CUSAは借りられた.一日20万円.
神経刺激装置は,良いモニターは年間4回までは
無料で借りられるらしい.
しかし,もっと早く申し込まないとダメと判明.
デモ器が少ないのであろう.
簡易の刺激装置を購入.
開頭して,最初に副神経(第11神経)脊髄根を直接刺激.
肩か゛動く.
それで,刺激装置は大丈夫と判明.
2.5cm 台の嚢胞は実は血腫のなれの果てと判明.
他にも古い血腫塊は黄色で腫瘍はグレイと見た目は異なっていた.
上方にみえる神経は三叉神経.
いつものことだが,三叉神経は神経束として圧排されていても見える.
顎の咬筋が刺激装置で動く.そこまでは予定通り.
内耳道周辺で,顔面神経を発見.なんと尾側に圧排されていた.
今までの例では全部,術野の上方,後面に圧排されていた.
まあ統計では30%が後方下方と書いてある.
まあ,物理的には顔面神経も残した.
画像上の塊の半分以上が陳旧性の出血の液体,あるいは血腫塊だったので,
予想よりも安心感はあった.
要は,血腫内を吸引,減圧している時は間違いなく,悪いことが起きないから.
まあ,研修医の先生に説明するような内容ではない.