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研修医のための脳外科カンファ 39回目 2019年7月9日

2019年7月4日に,グーグルアドセンスから無効なクリックがあったとのことで,宣伝は8月3日までのりません.なんとなくスカスカなブログになりましたが,勉強に関しての内容は豊富ということで.

今回は,典型例がきたので,教科書的な説明を.

症例1 70歳代 心房細動から中大脳動脈

病院には,ほとんど受診していないヒト.
昼間農作業,午後も農作業.水ものまず.
その後,意識低下,左上下肢麻痺で救急搬送された.
MRA(MR脳血管撮影)で右中大脳動脈の塞栓.
救急外来での心電図でAfあり.
発症から2時間以内の話.
これは,tPAの適応のど真ん中である.
型どおりの説明,急いで投与しました.

最近の話題は,「diffusion/FLAIR ミスマッチ」です.
2019年3月の情報.元の知識としては,
脳梗塞はdiffusion画像では,1時間で出現する.
FLAIRは3時間以降で出現するというもの.
もちろん,側副血行路があったりすれば,FLAIRが出てくるまでに時間が延びることはある.
と言うことで発症から4.5時間以内なら,投与しても可能なら,diffusion画像で所見がでて,FLAIR画像でまだ出ていないなら,発症時刻が不明でも比較的短時間以内の発症のものと推定できると言う話.
ということで,「diffusion画像で認められて,まだFLAIRで出ていなければ,tPA
の使用を考慮しても良い」という文言が入った.
「考慮しても良い」というのは,禁止はしていない程度の意味.「使っても禁忌では無いので,出血性梗塞から死亡しても,裁判でも適応に関しては負けないよ」という意味が含まれている.
実際は,さらに拡大していくかどうかは様子見の状態.
この方は,きれいに再開通して出血もなく,理想の教科書的な経過となりました.

症例2 90歳代 左被殻出血

朝 起きたら 起きてこない.しゃべらない.
救急搬送されてきて,血圧も高くない.
wake up infarction (起床時脳梗塞)は脳梗塞全体の20%なので,
そちらと予想.
多くの素人さんの間違いは「脳の血管が詰まる」と「頭が痛くなる」と思っている点.血管内に血栓が詰まっても,痛くなる理屈がない.血管壁が裂けてはじめて痛みが出る.
脳圧亢進と,その刺激も含めて血圧も上がる.
ということで,「頭痛無し」「血圧も120代で正常」で麻痺,失語があれば,普通に「寝ている間に脳梗塞が起きた」と考えるのが妥当.
実際は,左脳出血でした.
後は保存的加療となりました.

あまりに教科書的な症例.

 

症例3 80歳代 心房細動から後大脳動脈塞栓

全く同じように続けてきました.
急に左上下肢麻痺が出現,来院時心電図でAfあり.
問題は,塞栓で詰まった血管が後大脳動脈であった点と反対側の小脳にも新しい梗塞がある点.さらには,詰まった後大脳動脈側の小脳に陳旧性の比較的大きな出血の瘢痕があること.「過去に脳出血になった」は禁忌の項目に入っている.
そのまま,ヘパリンの持続投与になりました.
この人もDiffusion/FLAIR ミスマッチを認めていた.
しかし,禁忌項目もありヘパリン,脳保護剤のみ.
翌日のMRIではPCA領域全体の大きな梗塞が完成していた.
反対側は後交通動脈が発達していて,内頚動脈からの血流がメインで,後頭葉の梗塞は一切なし.ある意味良かった.

 

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