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研修医のための脳外科カンファ 50 回目 2019年10月10日

なんと50回目.地域研修の研修医は一人は整形のオペに入っている.
研修医1名と総合診療科の3年目医師に説明.

症例1 80才代 硬膜下血腫,外傷性SAH, 脳挫傷,ふきぬけ骨折,頬骨,鼻骨骨折

車椅子ごと,転落.
もともと右脳梗塞で左麻痺.
顔面打撲で,典型的な吹き抜け骨折,基本はblow out fxは,下壁,内側壁の骨折を言う.眼窩,眼球に圧が加わって,薄い下壁,内側壁の壁が外へでるもの.外側壁は硬い.さらに眼窩上縁(orbital roof)は頭蓋底になるので,頭蓋底骨折の病名になる.
この方は,下壁,内側壁ともに骨折,さらには上内側も折れて気脳症になっていた.抗生剤が必要.
手術が必要かどうかの基本は,外眼筋,特に下直筋,内側直筋が骨の隙間に挟まって,眼球運動が制限を受けた時に限る.
この方は脂肪のみの突出だったので,保存的加療.
研修医の先生は,眼窩底骨折など病名を言ってくれるが,
学生なら病名が言えれば良いが,医師になると「治療方針」を立てないと行けないので,研修医になれば,病名から治療法の選別,予後など順番に言えるようになってもらうのが理想.
さらには頬骨外縁の硬い部分や鼻根部の線状骨折あり.
これらは,ずれが著明で無い限り,手術適応なし.
頭蓋内も大脳鎌に沿って硬膜下血腫あるが,翌日のCTでも増大なしなので,
全て保存的加療となった.
受傷翌日には痙攣が起きた.元々,デパケンを内服していた.
当直医師がイーケプラ(500mg)朝夕点滴を追加してくれていた.
内服可能になって,もとのデパケンに眠前一回のフィコンパを追加した.
後はリハビリであろう.

症例2 60才代 転落後 硬膜下水腫, 頚椎,肋骨骨折

皆さんこける.お祭りに合わせて屋根掃除.はしごがズレて転落.
脳CTでは,小さな大脳鎌髄膜腫ある.他はMRIを撮っても出血なし.
第7頚椎椎弓の線状骨折,第3肋骨の線状骨折.
頭は打っていないような印象だったが,翌日,回転性めまい,嘔吐あり.
脳CT再検.出血(-).前庭神経性の眩暈.
眩暈止め,吐き気止めを内服したら翌日から消えた.
翌日のCTでは,来院時なかった硬膜下水腫がある.
意外と,急性の水腫は出来やすい.
脳表のクモ膜が裂けたら,出血もなくても髄液は外へでるので,それも
納得.その後は外来でフォローアップCTであろう.

症例3 30才代 高血圧性頭痛

外来に,7年前脳動脈瘤破裂によるSAHになった若い男性が,頭痛がすると来院.他の医師が先日の外来でロキソニンのみ処方して帰宅.
その翌日に健診で血圧が190以上あったとのこと.
去年の地域の運動会ではなんとも無かったが今年はフラフラした等,話を聞くが,過去の記録をみると降圧剤を3剤内服している.
いてみると,全く今は自己中断.
なんか怪しいので血圧を測定すると,大体250/160程度.
高血圧性脳症なのか高血圧緊急症なのか,本人は頭重感以外は全く症状なし.降圧剤をそれなりの量処方して帰宅.
病識?が無いのは右脳の障害があるからか,今後フォローアップ必要.

症例4 20歳代,腰椎穿刺後頭痛

これは,以前も提示した.
23ゲージの針で腰椎穿刺をして,二日後に体位性頭痛で来院.
MRミエログラフィーではクリスマスツリー状に見える.
脳脊髄液漏出症のガイドラインでは「ハーフインハーフアウト」の画像.
こちらは普通に1カ所だけ綺麗に穿刺しただけなので,クリスマスツリー様の漏出は,決して「ハーフインハーフアウト」などではなく,1カ所から漏れても,こんなになるという証拠写真である.
研修医は「細い針で刺したんですね.」と言うが,自分からすると一番太い針で刺した.普段の25ゲージペンシルポイント針とはだいぶ異なる.
問題は,1週間後には,腰椎レベルのMRミエログラフィーは完全に正常に見える.そして症状も消えた.1カ所からの漏出は間違いない.それでもクリスマスツリー状に見える.ガイドラインは正しくないと思う.

 

 

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