サイトアイコン Youは何しに真庭へ

研修医のための脳外科カンファ 51回目 2019年10月17日

DarkoStojanovic / Pixabay

火曜日の16時半からしているが,今回は木曜日に.
今回は,二段落としの落ちのある症例を提示.
左第4指の靱帯損傷で,キーボードを打つのが大変なので,なかなか先に進まない.

症例1 80才代 脳挫傷で実は瘤からのSAH

朝,玄関で倒れているところを発見された.頭頂部に大きなたんこぶ.CTでは対側損傷の側頭葉先端の脳挫傷.Sylvius裂のSAH そこからつながるテント縁までのSAHあり.
意識は清明.しかし,他の転倒した外傷性SAHと異なり「頭が痛い」としきりに訴える.
「洗濯物をほしていた」そこから記憶がないなど普通につまづいて転倒したヒトとはなんとなく違和感があった.その後段々意識低下.CTではオペをするほどのものはない.
5日目の採血で低ナトリウム血症(116)と普通の脳表にあるSAHの時とは異なる経過.
CTをよく見ると萎縮して開いたSylvius裂の中に7 mmの丸いモノがみえる.
昨年転倒したときに他院のMRA(MR脳血管撮影)が入っていたので,よく見るとMCAのM1-M2 junctionに瘤がある.それでさらに今回撮ってみると,間違いなく動脈瘤がある.脳血管攣縮にはなっていない.
外傷性SAHの場合は脳表に多いので,電解質が狂うことはまずない.
視床下部などが障害を受ける確率は低い.
要は,minor SAHを起こして脳圧が亢進して意識消失.それで転倒して脳挫傷になった.経過は脳挫傷のものではなく,脳動脈破裂によるくも膜下出血の経過と判明.
高齢なので,半昏睡状態になって,今の今,コイル塞栓術なども適応はない状態.誤嚥性肺炎,膀胱炎にもなりいつもの全身管理.

症例2 60才代 慢性硬膜下血腫からのラクナ梗塞

一ヶ月前からややおかしい.1週間前から右上下肢不全麻痺.
CTでは,左慢性硬膜下血腫.大量.診断はあっさりついたか.
病院にかかったこと無し.血圧が200/100と異常に高値.
しかし徐脈ではない.脳圧亢進に対するクッシングリスポンスは高血圧に「徐脈」が一般的.今まで病院にかかったことがないと判明.
要はもともと高血圧.採血では高血糖もあり.
慢性硬膜下血腫の手術は普段通り終了.
術後CTで圧排されていた頭頂葉/後頭葉の分水嶺梗塞があると判明.
退院前にMRIとMRA(MR脳血管撮影)を撮ると,なんと新しいラクナ梗塞.さらには各血管がデコボコと判明.頚部血管エコーでもプラークやや厚い.降圧剤,抗血小板剤などを開始.
慢性硬膜下血腫は再貯留するかも.
「脳梗塞の治療と再発予防」と「慢性硬膜下血腫の再貯留予防」とどちらを優先するかという命題.答えはある程度簡単.
脳梗塞は脳実質が障害をうける.慢性硬膜下血腫は架橋静脈の断裂であり,脳を圧排はするが脳実質の障害は出ない.
脳梗塞は一次障害,慢性硬膜下血腫による脳圧排は二次災害というところ.
入院病名が脳梗塞に変更.

症例3 80才代,造影されない多発病変

時々,経験する,グリオーマ,リンフォーマなどと鑑別を要する疾患.
多発の2 cm弱の病変がでることがある.
しかし,急性発症,脳室近傍で足麻痺.
2週間経過しても造影されない.多発と言っても一側の多発.
鑑別診断は,多発微小脳塞栓であろう.最初の1,2週間は造影MRIでも,その部分は抜けて見える.3週間以上経過して病変の周囲から中の一部にかけて造影されることが判明.
それも2個の病変が同じように造影される.

ということで造影されだして新生血管と判明.
脳の正常の血管は微小血管までBBB(血液脳関門)があるので,造影剤は外にしみ出さず正常部位は造影されない.しかし脳梗塞後,脳挫傷後の新生血管の場合は,初期はBBBがまだ完成しておらず.造影剤が漏出して造影される.

答えは,多発脳塞栓が経時的に少し大きくなって造影もされないので別病変を考えたが,一ヶ月経過して,実は脳梗塞でしたと判明した.
治療は脳梗塞に準じて行っていた.

モバイルバージョンを終了