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研修医のための脳外科カンファ 20回目 2019年1月15日

DarkoStojanovic / Pixabay

2019年1月15日,20回目 2019年最初のカンファレンスというかレクチャーというか,症例を提示しました.

本日の症例 1  80才代 脳膿瘍

前回の続きの経過.
脳脳膿の排膿術施行.そのときの膿汁をグラム染色もして培養にもだした.
染色ではグラム陽性球菌がでた.培養したが菌はでなかった.
なかなか,脳膿瘍で抗生剤を行く前に手術ができるという状況はない.
ガイドラインでは,セフトリアキソンで好気性とフラジールで嫌気性とカンジダなどに対応,それでも効果無いときはバンコマイシンと記載されている.
画像上も脳膿瘍が術後に増大.症状も増悪したので,バンコマイシンを追加したところ,漸く収束に向かった.

本日の症例2.60歳代 多発ラクナ性認知症

40才代後半までは,フルマラソンも出来ていた.
それが徐々に歩きにくくなって,失調性歩行になった.
段々,見た目はパーキンソン症候群なのか,小脳脊髄変性症なのかというような形.

小声,記銘力低下,集中力低下などあり.
毎回,「調子が悪い」と受診.そのたびに,3-5 mmぐらいの
小さなラクナ梗塞が違う場所に出来ている.
今回は,「異常行動」とのことで受診.
その都度,入院,点滴,リハビリ.少し改善.
しかしMMSEなどのテストをすると少しずつ落ちていっている.
アルツハイマー型認知症よりは頻度が低いが,
「多発ラクナ梗塞性認知症」と呼ばれる微小血管障害による症状.
特徴は,麻痺,失語などの大きな脱落症状はない.
低灌流障害などとも言われる.
全人口の有病率は1-5%,平均すると3%ぐらいのような.
結構,多いはずだがあまり,診断は着いていないような.
それは,ラクナ梗塞の時だけ関与して,段々症状が悪くなるのは別物と考えてきたからのような.

本日の症例3.30歳代,脳ドック,多発未破裂脳動脈瘤  父親が多発脳動脈瘤でSAH

もう,これは,お約束の説明がある.
1)二親等までに脳動脈瘤からのくも膜下出血になったヒトがいる方は,そうでない方の10倍脳動脈瘤ができる.

以前,両親がくも膜下出血になった24才男性が脳ドックをうけて,大きな脳動脈瘤がすでに出来ていて驚いたことがある.
10×10で100倍なりやすいのか,さらには遺伝性になれば若年に発症していくようになるのか.通常,今までは一族に発症したヒトがいない疾患に,特発性であるヒトが発症して,それが遺伝すると,その子供は発症年齢が若くなっていく疾患はいくつかある.

最初は,なぜ30歳代後半のヒトが受診したか分からず,理由を聞くと,問診票の横に中途半端に「父動脈瘤,硬膜下血腫」と半分間違った記録が印刷されていた.

聞くと,父親が多発脳動脈瘤であった.一つはSAHになったときに開頭クリッピング,もう一つは経過観察になったとのこと.
以前からの疑問点は,「多発脳動脈瘤のヒトのほうが一つのヒトよりも,くも膜下出血になりやすいのか」さらには,その一親等,二親等までに深達度というか,「子供にも動脈瘤はなりやすいとして,それは多発になるのか」であった.

UCAS Japanにその答えはあったのか.
1)未破裂多発のヒトは破裂しやすいか.
脳ドックガイドライン2014には,「多発脳動脈瘤の個々の瘤が破裂しやすいわけではないが,患者としてみれば破裂する率は高い」となるような.
発見時の大きさ,部位で破裂する確率はそれぞれ違うので,
多発の瘤がみつかれば,それぞれの年間破裂率を相加的に計算したら答えがでそう.たとえば,両側の内頚動脈後交通動脈分岐部に7 mmの未破裂脳動脈瘤があって,前交通動脈に6 mmの瘤があれば,一つずつのものより,破裂しやすいのはわかる.
印象としては,「多発瘤なら,その数にあわせて,瘤の大きさの単独の時の破裂危険率を相加的に足し算して,患者としては破裂率があがる」が答えの様.

2)くも膜下出血となった多発瘤のヒトは,さらに破裂しやすいか.
どうも,SAHになった瘤とは別の瘤がある人は,多発でもSAHになっていないヒトに比べて,5.5倍も破裂しやすいと言われているような.

ということで,この脳ドック受診者の父親の状況に関しては答えはでた.
3)SAHでさらに多発瘤なら,別の瘤が破裂してSAHになる確率は,他の全部未破裂の瘤のヒトと比べたら,今後破裂する率は高い.

次の質問というか疑問
4)片親がSAHになった多発瘤の持ち主の子供は,多発になりやすいか.SAHになりやすいか.

これは,瘤は出来やすいまではわかっているが,多発になりやすいかどうか,なかなかそこまでの大きな研究は無い.

受診者のMRAでは,瘤が3個あるようにみえる.前交通動脈,内頚後交通動脈分岐部,中大脳動脈分岐部とそろい踏みの印象.

5)多発瘤とわかって遺伝性もあったら,今後の方針はどうするか.

「瘤は発見からいつ頃破裂するか」のデータとしては,1年以内が高率,その後は一定などの記載がある.
発見された瘤が,「大型,あるいは多発瘤」のヒトは,一度早期にフォローアップMRA が必要であるとの記載がある.

半年後,1年後の再検が必要ということまでは,よくわかった.
治療法などはまた次回に.

 

 

 

 

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