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研修医のための脳外科カンファ 60回目 2020年5月12日

久しぶりの 研修医向けのカンファレンスというかなんというか.
年度末の3月には研修医ゼロ.
年度初めの研修医は誰が来るかなどで毎年4月はゼロ.
ということで,2ヶ月もなかった研修医向けの症例提示.
もう,やり方も忘れてしまった.

症例1 30歳代 脳幹出血 Locked in syndrome

自分も,教科書的な症状は初めての症例
血圧が200以上あっても未治療だった.

意識障害で救急搬送された.
血圧は来院時230ぐらいあった.
大きな橋出血.
四肢麻痺.舌根沈下.
数日後に気切.自発呼吸はある.
延髄には血腫は及んでいない.
2週間後の症状
眼球は上下に動く.
左右には動かない.
左顔面神経麻痺と四肢麻痺がある.
しかし,右目は閉眼できる.
意識は清明と判明.
有名なLocked in syndrome「閉じ込め症候群」となっていた.
教科書的な症状は,両側眼球の垂直運動とまばたきは出来るが,
眼球は左右には動かない.意図的な強い閉眼も維持できない.
それに四肢麻痺がついている.
まばたきは出来るが,強い閉眼はできないのは,
顔面神経は障害されて,上眼筋のみが動眼神経なので,
まばたきは可能.しかし眼輪筋は麻痺しているので,強い閉眼はできないのが答え.

症例2 70歳代  左内頚動脈閉塞 緩徐に閉塞

毎日タバコ2箱吸っていた.
もともとは右ラクナ梗塞で左上下肢不全麻痺.
完全失語と右上下肢麻痺で入院.
左内頚動脈が閉塞.
そこで血栓回収術が適応かと思ったが,
数年前のMRA(MR脳血管撮影)があったので,見てみると
左頚動脈はその当時から,閉塞気味でほとんど開存していなかった.
要は,徐々に閉塞していったと言うこと.
血行動態的脳梗塞と判明.
血栓回収は,心臓などにある血栓が
流れてきて狭くなっている血管に塞栓することが原因.
血管自体はきれいなのが条件.
血管自体がデコボコで壁が厚くなり閉塞するなら,
回収術は適応では無い.
前交通動脈を介して左中大脳動脈が栄養されていたが,
脱水で一番遠い.中大脳動脈の栄養される大脳皮質の梗塞となった.
結果として右麻痺と完全失語が出てしまったという状況.

症例3 70歳代 内頚動脈からの多発塞栓
遅発性出血性梗塞

一側は数年前にCEA(頚動脈血栓内膜剥離術)を受けた人,
シロスタゾールは内服中.
数年前に行ったCEAとは逆の頚動脈に潰瘍のあるプラークがある.
そのプラークがちぎれて流れた.
それが右側なので通常は,「左麻痺,空間失認」などがでるはずが,
左上1/4半盲が主訴であった.
脳MRIでは右後頭葉の塞栓.他にも小さな脳塞栓が20カ所以上ある.
右後大脳動脈はいわゆるfetal type(胎児型)で右交通動脈を介して
右内頚動脈から栄養されていた.
と言うことで右頚動脈のデコボコが原因での多発脳塞栓と判明.
入院前日にバイアスピリンがほかのところで追加されていた.
プラビックスの追加が必要か.
一旦,退院.それが発症3週間後に頭痛で独歩受診.
MRIを撮ると,右後大脳動脈から出血している.
「出血性梗塞」となった.
梗塞の範囲に出血したので,新しい症状はほぼ無いのが救い.
3週間経過して再開通で出血というのは,まれなケース.
どうすれば最適の治療になるか.
右頚動脈にはCEAかCASの処置が必要であろう.
出血性梗塞が落ち着いてからとなる.

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