サイトアイコン Youは何しに真庭へ

研修医のための脳外科カンファ 92回目  2021年9月2日

DarkoStojanovic / Pixabay

2021年7月,8月は忙しすぎて,ほとんど出来なかった.
8月後半から落ち着いてきたので,なんとかかんとか,短時間でもしてあげようと思ってやってみた.もう92回目になるが,途中の記録があまりない.
継続することは大変.

症例1 80才台 椎骨動脈解離からの小脳虫部の出血性梗塞

非常に珍しい.まず,小脳半球では無く虫部を中心に脳回に沿って左右にも出血性梗塞が広がっている.原因は椎骨動脈の壁の解離のため.
そして,末梢の小脳正中部を栄養する血管の再開通による出血性梗塞.

小脳自体は余力が多く,なんとかなりそうかとみていたら,小脳中部が延髄を直接的に圧迫している.第4脳室が狭小化,要は閉塞性水頭症になっている.
80才台後半のヒトを腹臥位にして出血性梗塞の部位を,しかも正中を削り取るのは手術適応としてはどうか.
当面は脳室ドレナージで逃げることにした.
手技自体は全く問題無く容易に終了.
翌日は,開眼して反応も良かったが,徐々に低下.
CTを撮ってみると,血腫の範囲と脳梗塞の範囲,周囲の浮腫が一回り大きくなっている.圧を逃がした分,腫れが大きくなったということ.

研修医の先生に質問.この人は,呼吸状態が良くない.
しかし,対光反射,睫毛反射はあるのはどうしてか.
答えは,延髄の直接的な後方からの圧迫で,延髄の機能.
咳反射,嘔吐反射,呼吸中枢の迷走神経系などは障害されているが,
上の中脳,これは動眼神経核がある部分,は大丈夫なので,対光反射は視神経,動眼神経系なので,大丈夫となる.
さらに睫毛反射は,睫毛の知覚は三叉神経でその核は橋にある.
さらに閉眼する顔面神経もその核は橋の後方にあるが圧排はされていない.
ということで,いつもは,大脳障害からなら先に障害をうける対光反射などは保たれて,咳反射などが落ちているという特殊な病態が出現した症例.
四肢麻痺もあり,重症.
他にも,脳室ドレナージの圧の設定方法などの説明.

症例2.40才台 硬膜外ブロック後の脳脊髄液漏出症

これは,類似の症例を提示したはず.また探してみる.
ポイントは,硬膜外ブロックの時に,少ししか麻酔液が入らず,本人がものすごく痛かったこと.神経根のaxillaの部分に当たって,そこから脳脊髄液が少量持続的に漏出し始めた可能性がある.
他に大量に腰椎穿刺後に漏出した症例などMRミエログラフィーを見せて説明した.

久しぶりに行ったが,自分にとっては,なかなか目新しい症例は無い.それでも2年目の研修医に取っては,新鮮だったような.
アウトプットという意味では,自分の中だけでは,答えにすぐに行ってしまうので,自分にとっても,「認知症予防」の一貫のような印象.

モバイルバージョンを終了