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研修医のための脳外科カンファ 99回目  2022年1月4日

DarkoStojanovic / Pixabay

初期研修医2年目の先生向けの症例提示.昨年12月は年末の用事で出来ず.
正月明けは用事がまだあまりないので出来ました.
新春の珍しい症例が集まった.

症例1 50才台 おそらく腎癌脳転移

右上下肢不全麻痺、軽度の運動性失語で受診。MRIでは左前頭葉に大きな腫瘍性病変があり、T2☆では内部に出血している。液体成分も結構ある。周囲の浮腫も強い。境界明瞭で脳実質内にあり皮髄境界に主座があるので転移性脳腫瘍。当日胸部から骨盤まで単純CTをとると、右腎臓に8cm大の実質性腫瘤がある。腎機能は保たれている。肺もきれい。普通に考えればRCC,腎臓癌の脳転移。造影MRIでは壁がリング状に造影される。珍しい。腎癌が脳転移から先に発見されたのは自分は初めての経験。精査もしないといけないし周囲の浮腫も強いしで大変。大学病院行きになった。もう少しお勉強して、まとめます。自分の経験した腎癌脳転移は、腎臓のほうのコントロールができていて、10,13年後に脳転移が出たヒト2名だけだったので、こんな田舎の狭いところでも見つかるのが驚きであった。

症例2 80才台 左前頭葉星細胞腫 grade2  てんかん発症

意識低下と右下肢の麻痺で年末に救急搬送されてきた。MRIでは新しい脳梗塞なし。左前頭葉にdiffuion強調画像で淡いhigh intenseの部分があるが脳梗塞には見えない。3 cm程度。年末なので急いで造影MRIを撮ると全く造影されない。石灰化もない。以前脳室内出血で脳室ドレナージチューブの経路に小さい陳旧性出血があるが、それとは関係なし。乏突起膠細胞腫にしては石灰化もないし年齢もあわない。3-4cm浸潤性で造影もされない。2015年の画像ではMRA(MR血管撮影)とFLAIRなどがあるが、diffuion強調画像がない。MRA(MR血管撮影)の元画像を見るとその時すでに前頭葉が肥大している所見あり。CTなどからも、おそらく星細胞腫 grade 2で合っている。石灰化もCTでもなし。脳実質の肥大。その周囲がてんかん源となって、てんかん発作からのpostictal palsyと意識障害の遷延であっている。途中でもう一度痙攣がおきたがNCSEでconvlusionのない痙攣重積であろう。高齢でもあり、生検もしないことになった。てんかん発作のコントロールがすべて。下肢の動きが悪い間にDVT(深部静脈血栓症)にもなった。

症例3 70才台 L-P shunt 効き過ぎ症例

アルコール多飲。視床手血、次は小脳出血と脳は結構痛んでいる方。
他院で水頭症に対してL-P shuntを受けて、こちらに転院。シャント後に両側硬膜下水腫になっている。情報を送ってもらうと、Strata 型のバルブであった。0.5から1.5にしたが、頭痛は続くので、CTを撮りながら2.5の最高値まであげた。それでも水腫が大きくなるなら、皮膚切開してシャントチューブの結紮になる。最初レントゲンでバルブの形をみて、コッドマン・ハキムの3-22cm のタイプではなかったので、自分のところの可変式バルブは2種類しか取り扱ってないので、Strataと信じて圧の確認をした。0.5という数字と変更したら1.5と出たので間違いないと判明した次第。

症例4,5 60才台 脳幹梗塞 2例まとめて

延髄の梗塞は特殊。橋梗塞も特殊。
共通点は、「飲酒もしていないのに酔っ払ったようなしゃべり方と歩き方」である。
だいたい急にならずに、「2,3日前から」なる。
麻痺も軽度なので、発症日は車で通勤したりもしていることが多い。
脳幹梗塞を疑った時は、diffuion強調画像は最初から3方向撮ることが多いし他の医師にもそのように勧めいてる。鑑別診断というよりは、上下の広がり、前からみたら左右のどこら辺までが詰まっているかなど解剖学的にもよくわかること。翌日MRI再検して、広がりを比べられることなど便利である。
入院しても3-5日は増悪する。その説明は必須。
危険因子も洗い出さないとだめ。比較的若い年齢に多いため。
症状があれば、画像がはっきりしなくても、入院して翌日diffuion強調画像3方向撮るのは必須。これを見落とすと面倒なことになる。
治療は原因しだいだが、脳保護剤、血流改善剤、リハビリは共通。

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