サイトアイコン Youは何しに真庭へ

研修医のための脳外科カンファ 23回目 2019年2月7日

DarkoStojanovic / Pixabay

2月になり,一か月の地域医療研修のヒトも2名は交替.
1名は,2か月コースなので,合計3名の2年目の研修医.
時間があわずに,2月7日に延期

本日の症例1 80才代,中大脳動脈 心原性出血性梗塞

発症前日まで,全く元気であったひと.
朝起きてこなかったので,家人が見てみると左上下肢麻痺.
心房細動がある.それまでは言われたことが無かった由.
典型的な右中大脳動脈塞栓.
まだFLAIR画像では病変がでていない.
一般的な知識その1)
FLAIR画像で脳梗塞が白くhighに写るのは3時間以降とされている.
diffusion画像では1時間後には分かる.
ということで,その脳梗塞が発症してからの時間を推測が可能とされている.

その2)起床時脳梗塞(morning infarction)は脳梗塞全体の20%を占める.
上記と合わせれば,夜中に寝ているときに脳梗塞になっても,大体の時間は予測は可能.
上記のことから,tPAの適応は,前の晩に寝た時刻が健常状態の最後なので,まず不可能だが血栓回収術はできるかもということになる.

血栓回収術は,2019年の春から,血管内治療専門医でなくても,今までに血管撮影手技をしていたヒトなら,それだけはしても構わないという通達が出た.
4番目の条件に「最も近い病院から救急車でも1時間以上かかる」と言う項目がある.さらには,「近くに転勤になったら,自分はしません」という項目が入っている.

そんなことで,救急搬送された患者さんは他院へ相談したが断られた.
一般人の知らないことで,大変なこと.
「脳塞栓となって8時間以上経過して,再開通するとどうなるか」ということ.
脳自体がすでに壊死に陥っているだけでなく,血管壁自体も脆弱になっている.
そこへ一気に血流が戻って,血圧が上がると,壁が壊れて出血になる.
周囲に漏出するぐらいの出血なら問題無い.しかし,壁が決壊したように出血になれば,
脳梗塞による浮腫の周囲にさらに血腫ができる.それで余分に脳を圧排することになる.
さらにその次は,内側に腫れたらテント切痕ヘルニアになる.
そうなると中脳周囲の後大脳動脈が圧迫されて閉塞する.そうなると後大脳動脈も閉塞する.そうなると,右後大脳動脈の梗塞の部分も浮腫になる.そうなるとさらに腫れる.
半対側に腫れると,半対側の脳室も圧排されて,急性閉塞性水頭症になる.
さらに脳が腫れる.
ということで,出血性梗塞になると,どんどん 脳の状態が悪化する.
ということで,翌日のCTをみて,出血性梗塞と判明,全麻で緊急で外減圧を行った.

右前頭葉外側の血腫もあり,右側で劣位半球なので,内減圧をするかどうかである.
年齢を考慮して,外減圧で硬膜を開けてGoretexで補綴した.

実際は,上記のことが連続して起きてしまった.

本日の症例2 50才代 延髄梗塞

延髄内側症候群は,脳梗塞全体の0.5-1%程度.
しかも,最初は対側の軽度の麻痺.
MRIでは,最初は写らないことが多い.
27例集めた症例でも,発症24時間以内なら10例中,3例しか写っていない.
昔ながらの対側麻痺,同側舌の萎縮,対側の深部知覚障害などが揃う確率は20-40%
まあ,椎骨動脈からの穿通枝梗塞だが,自分の印象では最初に診断が着くかどうかは
非常に困難.
「後医は良医」の典型例の疾患のひとつ.
診断をつけるには,diffusion 3方向を撮ること.それで写れば良い.
それで診断がつけば良い.
さらに2週間後には,次はT2の3方向.これで画像としては描出可能.
予後もあまり良くない.

これは,橋下部の梗塞でも同様.
今までの経験では,とにかくdiffusion 3方向を連日撮影することが診断への近道.
知らないヒトも多いが,MRI は連続撮影ではない.
5 mm撮影して2 mm間隔をあけて,また5 mm撮るなど,とにかくスキップしながら
撮っていく.
ということで,以前のMRIでは脳幹梗塞では1/10ではスライスアウトで一回目では,写らないというデータもあった.
「脳幹,特に下部の梗塞は,診断が難しいですよ」というお話.

本日の症例3 50才代 前大脳動脈解離による脳梗塞

左頭部打撲による右前頭部の脳表のくも膜下出血.
左への転倒でそのようになったが,原因は左下肢麻痺.
MRIでは,右前大脳動脈の途中からの途絶.
話を聞くと,2週間前から,時に左下肢の脱力発作があったような.
MRAを3Dにしてもらって,A2の形をみると,凸凹であるどうも
動脈解離によるものであろう.
原因は何か不明.タバコかアルコールか?
どちらしても,なかなか大変.

モバイルバージョンを終了