医療関係

慢性硬膜下血腫は2泊3日で退院へ。

人口41000人の小さな市でも周囲の人口も含めたらそれなりで、年間40回近く慢性硬膜下血腫の手術をしている。一人の常勤医しかいないので、とにかく面倒が起きないように注意してきた。
1)初期研修医の先生方(要は卒後2年目)の医師に一緒に入って手術をしている。
このときは、一つずつを説明して行う。穿頭をしてもらう。側頭筋、皮下、表皮も2,3針ずつ縫合してもらう。ものすごく時間がかかる。うまく縫合が出来ていないのは「させた、こちらの責任」なので、彼らが縫合した横を自分がもう一度念のために縫合したりする。しかしそれは、「手術時間が余分に15分ぐらいかかる」ということなので、入院期間には一切影響しない。
忙しいオペ室は、不平、不満があるが、「新人教育」はどの職種も余分な時間がかかるので、そこはお互い様で,自分も「耐える」ことを覚えた。怒ったところで、とたんに初心者、初学者たちの速度があがることは100%ない。かれらの経験値が一つでもあがれば、次のステップにつながると信じている。看護学生も手術室実習というのがあるが、まあ、できるだけ説明はしてあげている。まあ、むこうは何か言っている様な程度しか理解はできないが、はじめはそんなもの。
2)縫合に関しては、自分は血腫腔にドレーンを入れるので、帰室して、縫合部から液体が漏出してくるような縫合には絶対なってはいけない。皮の袋に水をいれているようなものなので、それは絶対にさける。
3)翌日CTを撮ってドレンを抜去。
その後は、5日目にCTを撮って、採血して抜糸して,その日に退院としていた。以前の病院のやり方を踏襲していた。要は手術を入院当日にして4泊5日で退院にしていた。
しかし、2泊3日の病院もそれなりにある。
手術時間も短く、入院期間も短縮させて、従前の結果と同等の結果になるためには、
1)手術で血腫を吸引、洗浄、生食で置換の方法をやめて、チューブを入れて排液のみの手術にする。これも成績は代わっていない。吸引、洗浄の手間が無くなって20分ですむ。
再貯留率は洗浄したものと変わらない。発症からの経過時間が長い、均一な液体になっておれば問題ないであろう。洗浄したらオダオダがたくさん出るのは洗浄したほうが良い印象がある。まあ、研修医の居るときは吸引、洗浄、生食置換として、自分一人の時はチューブ留置のみよいでああろう。手技が異なると手術部スタッフ、病棟ナースなどが困惑するだろうが、慣れてしまえば同じ印象。数回行えば、皆慣れるであろう

2)翌日にドレーン抜去は当然として、手術中にドレーンの穴には糸をかけているが、それをくくる。
3)その翌日に退院するためには、抜糸をどうするかが一番の問題。
考えられる解決方法は、(1)埋没縫合の追加:たかだか4cm程度の皮切なので、筋層、皮下を丁寧に縫合して、埋没縫合でさらに細い吸収糸で丁寧に表層もあわせてしまえば理解することや血腫液が創部から漏出してくることはない。その上からいわゆるサージカルテープできれいに止めてしまえば抜糸は不要になる。ドレーン部の糸も退院時に抜糸してテープで寄せてしまえば,精々3,4mmの穴は一日で癒合するであろう。要は退院後も全く抜糸自体が不要だが、手術時の手間が少しかかる。若い研修医師はあまり,出る幕がなくなるかもだが、皮下の縫合なので、彼らも参加出来る部分がある。
(2)表皮はナイロン糸、自分は4-0-nylon糸できれいに表皮を合わせており、2回目の再手術の時は、いったいどこを切ったのかわからないことも多い。現実的には,外傷もステイプラーで縫合しても小さい傷の場合、頭皮でも翌日に傷の確認をしてからはopenにして泡で洗って清潔を保って5日目、6日目には来院してもらい抜鉤して、なんの問題もない。それでいくと、ナイロン糸で縫合して3日目に退院時に創部の確認をしてduoactive ETとかを貼って、そのまま帰宅して、1週間後に外来受診、CT撮影、採血をして、抜糸をすれば全く問題無いような気もする。ステイプラーで縫合すれば、さらに速いが手術材料として請求できないので、安い4-0-nylonで縫合している実態がある。とにかく一人常勤なので、入院中には呼ばれることが無いように。帰宅しても、次の外来まで何も無いようにというのが基本。(月)、(火)、(木)は大学病院から外来にきてくれているので、その日にきてもらって、抜糸などをしてもらったら良い。
外来で4-0-nylonを抜糸するので「眼科ハサミ」と「モスキート」が必要。これはそろえてもらえば良いだけのこと。あるいは中材から降ろしてきても、時間はかからない。
要は、認知症などのひとで2泊3日で帰って、その1週間前後できてもらってCTを撮って、外来の通院パターンに持って行ければそれで良い。暴れて大声で叫ぶことは、病院のスタッフが困ると言う事実もあるが、それよりも、本人も必死で、顔に汗かいてパニックになっているのをみるのはつらい。過剰な興奮で困っているというのが正しいところであろう。
入院期間が短縮、そして外来では、自分では無い先生の外来の時にフォローに回ってもらえば、自分のトータルの仕事量はだいぶ減る。
今までの反省で、5日目にCTを撮って異常がないことを確認して退院してもらっていたが、
前の病院でも、今の病院にきて丸7年間でも5日目のCTで問題があった患者さんは、そもそも、手術の前から2層、あるいは亜急性期などで、本物のよくある慢性硬膜下血腫では無い人だけであった。それを考えると、その後に問題になるヒトは、翌日のCTで、すでに怪しかったと言うべきである。長期のリハビリを希望などはまた別の要因になるが、基本は2泊3日になるであろう。不穏、不眠、譫妄などは環境が変わることが発生原因の最たるものなので、2泊3日が限界であろう。実際は、一泊二日でも表皮を縫合しない方法なら帰れないこともない。
そこは,本人は認知症で歩き回って、さらに意味不明な行動を取るので、家族がとにかく速く帰したい時はそのようにしよう。家族の意向にそった医療を提供するのが大事。
最大の問題点は慢性硬膜下血腫を治癒させても、もとからあった認知症は治らないこと。
またアルツハイマーのヒトは5倍転倒率が高く、脳挫傷になる割合は50%増しという事実があること。皆で支え合うためには、最短時間の医療行為が大事。
医療行為、入院診療は、高齢者にとっては「有害行為」なので、それを肝に銘じておかないと。
「ともに老いる、地域の医療、最後まで」というキャッチフレーズではどうか。

2014年からの働き方改革に、これも入れていこう。
通常の典型的な慢性硬膜下血腫の場合、2泊3日の病院は,増えている印象を受ける。

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