脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 55回目 2019年12月13日

症例1 10才代 脳幹から小脳病変

なかなか,変わった画像.
解剖学的には中脳蓋,特にいわゆる下丘の一部から,第四脳室上髄帆あたりに病変ある.血管障害の後の嚢胞性変化なのか,腫瘍性病変なのか,症状と画像があわない.全くみたことが無い画像.造影MRIでも全く増強効果なし.
「一時的に目が見えにくくなった」なら,中脳上丘のEdingerーWestphal核の障害なのか,とりあえず精査依頼しか出来ず.
中脳蓋は背面,まあ,中脳蓋の蓋はフタの意味なので,その腹側の中脳水道さらに腹側は,中脳被蓋(ヒガイ)でフタをかぶった場所という呼び名である.

症例2 70才代 分水嶺梗塞のある形

NIHSSは3点,しかし段々増悪する.分水嶺梗塞なら,前,中,後大脳動脈の境界なので外側脳皮質なら,誰でもわかりやすい.しかし,良く出てくるMCAとACAの末梢部の境界部,正中から少し離れた部位で前後に幾つかの小さな梗塞がでることがある.これも分水嶺梗塞である.NIHSSもそれほど悪くない.まあ,2,3日目からは改善.左頚動脈分岐部にプラークがあり,そこからの血栓なのか,血行動態的な梗塞なのか.DAPTになって独歩退院.

tPA適応の有無の問題.

自分は学会出張だったので不在.若い脳外科の先生がtPAを投与した.画像,神経症状などからどうかと思うが,非常に良くなったので良しとしよう.何とはなしに,一番最初の使用ガイドラインよりは,だいぶ基準が甘くなっており,当直などで自分が居るときに増悪するのが,嫌なら適応基準は拡大する印象.

症例3  80才代 視床出血 典型的脳出血例

視床出血が全脳出血の30%,被殻出血が全脳出血の40%で,このあたりで70%は出血する.
この症例は,あるいみ典型例だが,脳出血の時に胃潰瘍になりやすい.
それはなぜか.どの部位の出血で一番胃潰瘍になりますかというお話.
視床下部が脳の自律神経の中枢なので,その周囲の視床出血がなりやすいが答え.被殻出血で胃潰瘍になったヒトは,ほぼみたことは無い.
視床手血の中では,後方なので,内包後脚は全滅.必然的に反対側の上下肢麻痺は,ほぼ治らない.その分,失語はほぼ消失.
まあ,典型的な画像,経過だが,自分が研修医1年目,2年目の頃は,このような画像,神経学的所見なら,その後はどうなって,何に気をつけて診療して,次はどれぐらいで回復期リハビリテーション病院に紹介してなど,全く五里霧中.
その後,多くの人をみたおかげで,またですかという感じ.
しかし,それは「脳出血オペ無しコース」の重症,軽症,中等症のクリパスができて行った時代と一致する.そういうガイドラインがあれば,今の新人さんも理解が早まるような気がする.

 

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