今日は,久しぶりに慢性硬膜下血腫の患者さんが入院.当日手術.
16時15分まで手術があって,17時から30分間だけ,お話をしました.
本日の症例1 50才代 環軸椎回旋性亜脱臼
交通事故で,他の車とぶつかった.
首が曲がっている.その形で,止っている.動かない.痛い.
cock robin positionとかいわれている首の位置.
ロビンは,「ヨーロッパコマドリ」でcockは,雄の意味.
首をかしげる感じが似ているから.
CTでは,半分ぐらい,C1, C2間で回旋している.曲がっている.
まあ,徒手整復で少し戻った.
一般的には子供に多い.関節面自体がまだフラットでずれやすいため.
さらには,周囲の結合組織も筋肉も靱帯も柔らかい.
しかし,大人になれば衝撃がないとなかなかならない.
亜脱臼でも,大抵は,徐々に自然になおる.
本日の症例2 40才代 慢性硬膜下血腫
最近の慢性硬膜下血腫は,80才代から90才代が多い.
40才代後半の慢性硬膜下血腫は珍しい.
高齢者と若年?(65才以下あるいは50才以下)と比べると,慢性硬膜下血腫も症状が全く異なる.
若い人の場合,典型的な脳圧亢進症状を示す.
この患者さんは,頭痛と嘔吐,一時的な意識消失をして来院.
緊急で,オペをしたけれど,
穿頭して血腫液を外に出したら,手術中にもかかわらず,
脈が40後半から70まで上がった.
自分も久しぶりにみたが「クッシング レスポンス」であった.
要は,血圧上昇と徐脈になっていたとわかった.
術直後から,本人も「頭痛が消えた」とのこと.
以前,若い人の慢性硬膜下血腫の患者さんの眼底検査をしたら,
炎状の眼底出血を見たことがある.
それでも,普通に話をしていた.
高齢者の場合,頭痛,嘔吐などの症状はまず出ない.自分は見たことがない.
かわって「反応が鈍くなる.」さらには,正中まで圧迫されるので,
大脳鎌との間の正中側の脳が一番圧迫される.
要は,作用反作用で,足の運動領に相当する部分が一番圧排を受ける.
結果として「下肢麻痺」がでてくる.要は,「スリッパが脱げる」などの
訴えで家族が連れてくることが多い.
まあ,「反応が鈍い」を認知症と誤解することもあり,
これが,世間でいわれる「治る認知症」と呼ばれるもの.
本日の症例3 70才代 右被殻,皮質下出血
脳出血はどこにでますか?
初期研修医に聞いても,答えはなかなか返ってこない.
教科書的な説明は,
4割が被殻出血
3割が視床手血
後は1割ずつ,小脳,脳幹,皮質下出血が1割ずつで全体で10割.
初期研修医だけでなくて,他の科の医師も視床,被殻出血の区別が付かない.
簡単な見分け方は,内包の外側が被殻で内包の内側が視床.
視床は脳室の壁を形成しているので大きな出血なれば,脳室穿破を容易にしやすい.
被殻出血の場合,大抵は外側なので脳室穿破はしない.
もちろん,combined(混合型)と呼ばれる視床,被殻両方にまたぐ血腫もある.しかし,2-3 cmの血腫なら大抵は判別できる.
それはなぜか?
答えは穿通枝の血管系が違うから.被殻は中大脳動脈からの穿通枝.
視床は,後交通動脈,後大脳動脈からの穿通枝である.
それとこの人の出血は外側の被殻とさらに皮質下まで大きく広がっていた.
多くの人の質問で,「一回出血したら,いつまで出るのか」がある.
答えは「15分から30分で大体止まる」
まわりに血腫塊ができて,圧迫止血の形になって止まる.
再出血は一般に6時間まで.
翌日CTを撮って大きさ,形状が変わっていなければ,そこからさらに出るヒトは,ほぼゼロです.
慎重に対処するなら6時間後,24時間後にCT再検すれば良い.
抗血小板剤内服,高血圧のヒトなどでは条件が悪くしばらく出ることがある.
まあ,手術の情報などは今回はなし.