脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 82回目  2021年2月25日(木)

2か月間の研修医の先生にむけて,最後の脳外科カンファ.
金曜日には,埼玉県に帰るので,やってみた.

症例1 80歳台 複視からのCCF

非常に珍しい症例.複視で発症.頭痛,眼痛なし.
時に,外転神経,動眼神経,滑車神経単独麻痺のヒトがくる.
普通にMRIを撮って,さらにdiffusion 3方向でも全く新しい脳梗塞は見当たらないことが多い.複視が強い時は,入院して脳梗塞に準じて点滴をすると改善が早いことがある.
この方は軽度だったので抗血小板剤などの内服で2か月通院.
平均3か月から半年で,今までのヒトは複視も消失して,生活も楽になって卒業というのが,今までのパターンでした
この人も,複視も消えたとのことで,一旦卒業した.
1週間後に,頭痛,目の奥が痛いと来院.
複視はない.
MRIを撮ると,右上眼静脈の拡大.
内頚動脈だけのMRA(MR脳血管撮影)で初診時に無かった画像であった.
内頚動脈のサイフォン部からモヤモヤしたものが両側,特に右側に見える.
さらには,右の目の奥が痛い.血圧が190まで上昇.
などで「内頚動脈海綿静脈洞瘻」と判明.
高齢者で外傷も無いので,「特発性」であろう.
経静脈的に海綿静脈洞を塞栓するかどうか.
専門病院に救急搬送となった.

症例2 70歳台 後頭骨線状骨折,脳挫傷,急性硬膜下血腫,脳振盪,

グランドゴルフ中にトップに飛ばされて後頭部打撲.
2日後に独歩受診.途中の記憶がない.後頭骨の線状骨折,小脳挫傷,半対側の前頭葉脳挫傷,急性硬膜下血腫ができていた.首の後ろも痛い.保存的加療.脳振盪も勿論あった.
退院後は,2週間後から頭位変換性めまいが出現.
これは脳振盪ではなく,「内耳震盪」によるもの.
脳をいくら調べても,答えはでない.
脳外科的疾患+耳鼻科的疾患.
本人は,そこまで重症とは思って居なかった症例.

症例3 70歳台 両側視床梗塞

これは,時に経験する.
それまでは,脳梁膨大部とその左側近辺の悪性リンパ腫があり,その近傍に放射線治療をしていた.メソトレキセート大量療法は75才まで.それでこの症例には行われず.
基本の放射線加療の方法は,造影される部分に30 Gyをあてて,残りは30 Gyを全脳照射して,腫瘍部には60 Gy当たる計算.
この方は40 Gy ぐらい当たって,終了して当院へリハビリ目的で入院.
入院して2週間ぐらいは,歩行のリハビリをしていた.
入院中に,急に意識が低下,反応低下.
鑑別診断は「症候性てんかん発作」であった.
発症が急激な意識低下だったので,抗てんかん薬を投与しながらでも起きたと解釈.
しかし,MRIを撮ってみると,中脳の一部と両側視床に脳梗塞が出来ていた.
以前から,top of Basilar syndromeなどと言われて居た疾患群.
両側視床梗塞が左右対称に起きることがまれにある.
その理由は,視床の血管系の理解から.
視床穿通動脈は,前方と後方にある.
前方の視床穿通動脈(anterior thalamoperforating arterry)は後交通動脈から分岐する.後方の視床穿通動脈は後大脳動脈のP1 segmentから分岐する.
P1 部分は脳底動脈先端部から後交通動脈が後大脳動脈に合流するまでの部分.
そのうち,後交通動脈から出る視床穿通動脈は,通常は,左右それぞれの後交通動脈から穿通枝が同側に分岐する.
それが,血管の破格があって,時に一本の大きな穿通動脈が一側からでて,途中で枝分かれして両側を支配,血流を送っていることがある.
解剖レベルでは17例中3例にあったとの報告もある.
ということで,この人はおそらく,一方の後交通動脈からの穿通枝が閉塞して,
両側同時の視床梗塞になったものであろう.
傾眠,四肢不全麻痺などなかなか重症になって,改善してこない例が多い.

症例4  50歳台  外傷性TOS

これは以前に提示したかも,また段取りをします.

前斜角筋離断神経剥離術の適応と思って準備をしていたが,1年以上かけて改善したので,
保存的加療で.

 

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