脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 33回目 2019年5月28日

1) 本日の症例1 80歳代 トルソー症候群 大血管奇形

これは,前回説明したが,
両側に大きな塞栓,小さな塞栓が20個以上あるので,
普通に考えたら心原性.
CTAをしてみました.まずは驚きの血管奇形
まず,右の頚動脈というか無名動脈というべきか,通常は大動脈弓から分岐するもの.その血管の起始部が,大動脈起始部から心臓そのものに一部かかっており,そこから出ている.
その血管からは,右頚動脈と右椎骨動脈がでているが,左の鎖骨下動脈もその血管から出ている.左鎖骨下動脈が右の無名動脈からでているということになる.左の総頚動脈,椎骨動脈は大動脈からでている.しかし,総頚動脈は起始部でものすごく狭窄をしている.
上に上がって外頚,内頚動脈分岐部には狭窄はない.
それらと石灰化した大動脈アーチがあるため,左PCA領域の出血性梗塞も椎骨動脈起始部の狭窄からの血栓が流れたとしたら説明は付く.左右の脳表の多発脳塞栓も説明がつく.
心臓内には血栓(-)
しかし,その画像をよく見ると驚きの所見がある.
膵癌がある.そして多発肝転移もある.
ということで,トルソー症候群となる.
トルソー症候群もありふれた疾患になってきた.癌細胞がムチン,サイトカインなどを作るため,血液が粘くなる.
担癌患者の4人に一人がなると言われている.
血液をさらさらにしないといけないので,今はDOACが推奨されている.
しかし,ワーファリンは1錠10円で,他のDOACは一錠250円で朝夕必要となると
1日500円対ワーファリン2錠なら20円.
療養病棟,施設などマルメのところでは,一月15000円対600円になるため,
必ず,ワーファリンに変更してくださいと希望がくる.
患者さん自体は,嚥下困難で,誤嚥性肺炎を併発といういつものパターン.

2)症例2 70歳代 cheiro-oral 症候群

視床出血のほうが,視床梗塞よりも,これになる確率が高い.
視床出血の場所によっては,3週間もしたら症状がでる.
有名なのは,口角の外側,頬部のしびれと手掌のしびれが出る.
大体,大きさとしては1cm程度である.
そもそも,視床は感覚の中継点である部位には,感覚の分布がある.

ある部位のしびれ感は,ある部分に分布.それをマッピングすると
小さい人形の形になる.
それで手掌と顔面は横に並んでいる.その部分が障害を受けたら,特徴的なしびれがでる.
左の視床出血なら,右の顔面,特に口角の外側と頬の部分と右の手掌にしびれ感がでる.
足は少し離れているので,しびれが出る確率は低い.
実際は,足の先がしびれるヒトも中にはいる.

3)症例3 80歳代, 延髄下部外側穿通枝梗塞

初発は,左下腿のしびれ.
次は,右下肢の軽度の不全麻痺,
両上肢は全く症状がない.
脳梗塞かどうかもわからない症状.
diffusion 3方向を撮ってみた.
わかったことは,右延髄の外側の5 mm程度の梗塞.
延髄の下方で錐体路は交差する.
特に下肢の錐体路は上肢の錐体路よりも下方で交差すると言われている.
歩行をみてみると,右下肢のほうが不安定.
ということで,延髄下部下端あたりなのは,すでに交差して右下肢の不全麻痺が起きている部分.
感覚の上行路も交差する.左の下腿からの感覚の上行路はすでに交差した後ということがわかる.
非常に珍しい場所の梗塞でした.
もう少し,解剖の勉強をしてから,追加筆記予定.

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