脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 75回目  2020年11月24日

なかなか,出来ない研修医のための症例検討会.
11月最初の火曜日は祝日.次の火曜日は患者搬送で自分が不在.
その後は,なんとか2回できた.

症例1 40才台 典型的な前頭葉底面,側頭葉先端の脳挫傷

転倒して,右後頭部を打撲,打撲部の骨折はなし.その対側の左前頭葉と左側頭葉の底面の脳挫傷.発症から3日目ぐらいまでは頭痛も軽度.しかし周囲の脳浮腫が増悪したら明け方に頭痛がしだした.
頭痛は,明け方,4時,5時が頭痛がするとのこと.
人間の脳圧は明け方に上がるので,ちょうどそのときにあっている.
その時刻にグリセオールを点滴すると眠られる.
前頭葉性のめまい,症候性てんかんなどが今後,おきるかどうか.

症例2 幼児,頭蓋骨線状骨折,対側脳挫傷

昼間に転倒.1時間後に受診.一旦帰宅.
その後,数時間後に嘔吐.その時点でCT撮影.
最初の受診時は痛がって泣いているが,意識は清明なので,CTを撮らなかったことは正しい判断.CTを撮ってみると,左頭頂部の線状骨折と右前頭部の脳挫傷がある.
脳挫傷は 5 mm程度.周囲の浮腫も軽度.
しばらく入院が必要.

症例3 60才台 ESUS疑い,小脳,右側,左側大脳多発脳塞栓

右上下肢麻痺で入院.MRIでは左に多発の微小脳塞栓.右には2カ所ぐらい塞栓.小脳にも2カ所塞栓.Af(-),頚動脈エコーでは一部が狭窄だが,はっきりした原因は入院時は不明.脳梗塞の25%は原因不明.ESUSは,(Embolic Stroke of Undetermined Source)の意味で,「塞栓源不明の脳塞栓症」の意味である.
原因不明なら「unidentified」の方が一般的だが,UFOの「U」は未確認で,このunidentified を使っているが,「原因を決定できない」という意味合いが強いのであろう.未確認の塞栓源というよりは,いくつかの原因から絞りきれないという意味合い.
治療は,今までのデータ,ガイドラインでは「抗血小板剤」が勧められている.しかしDOACが出てきてから,抗凝固剤のトライアルもされている.問題は,未治療の高血圧,高脂血症,境界型DMなど多彩な危険因子,心肥大もあるとなると,心房内血栓の疑い,Afはない.最初は抗凝固剤を投与したが,状況は,「進行性脳卒中」という状態.MRIでも脳梗塞の拡大,麻痺の進行.どうしたモノか.
脳梗塞の時の血圧管理は,一時は220まで経過をみるなどがあったが,昨年には180/110ぐらいまでが,許容範囲とされたような.しかし,血圧が240ある人が160まで下がるとどうなるか,血行動態的な脳梗塞になると思われる.
大血管径のCTAの結果は,極めて広範囲の血管の石灰化であった.
脳MRA(MR脳血管撮影)でも一部は途切れて見える.要は,動脈硬化がもとにあった,多発脳血栓であったかも.
要は,ほんとに原因がundetermined 決定出来なかった多発脳梗塞の1例.

症例4 60才台 RCVS 2か月後のMRA(MR脳血管撮影)

「可逆性脳血管攣縮症候群」(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome: RCVS)
論文では,12週後には,画像上の血管攣縮も戻るとされている.危険因子は高血圧,女性.最初に頭痛がある.
subpial hemorrhage がある.T2☆で最初は脳表のSAHかと思ったが,脳実質の出血と判明.これは陳旧性の出血.血管が攣縮して周囲に血液がにじみ出たモノであろう.
MRA(MR脳血管撮影)で血管がデコボコに細く見える.脳梗塞範囲もいびつ.側頭葉先端あたりと尾状核頭部など普段あまり見ない場所.
血圧が220ぐらい.最初は画像の解釈に困惑した.
RCVSは,多くの病態の通称である.

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