毎年,3回だけだが,3年目になるが〇〇〇立大学に授業に行った.
40 km以上離れており,こちらは大変.
「脳神経外科」の講義を一回90分,3回することになっている.
今までも,付属の看護学校,医師会の看護学校,リハビリの学校などで,「脳神経外科」の講義はしてきたが,曲がりなりにも「大学の看護学科」なので,自分としては,教科書は読んでもらって,最先端の「現在はどうなっている」というお話を組み込みたい.
実際は非常にめんどくさい.というのは,とにかく国家試験に合格するのがポイントなので,今の今,要は卒業してからアップデイトしていく知識よりは,「教科書に載っていて,国試に出る」知識が必要.
授業は,最先端の知識と必須の知識の提供.
必須の知識は,こちらにとってはどうやって教えるかがポイントになる.
まず古典的に大事な解剖の話.
学生さんにとって必須の知識は,専門用語を覚えること.しかも一般人が使っているのではなく,正しい意味での専門用語の定義を覚えること.
「中枢神経」の定義は「脳」と「脊髄」だけである.そこから少しでも,1 mmでも外へ出たら「末梢神経」という分類に入る.
「末梢神経」には脳神経,脊髄神経が含まれる.
坐骨神経,橈骨神経などが末梢神経なのは,一般人もわかる.
わかりにくいのが,12の脳神経が「末梢神経」に分類されること.
頭蓋骨内の神経なので,中枢神経に入りそうだが,言葉の定義なので「末梢神経」にはいります.
その1)12の脳神経の覚え方:
これは,多くの覚え方があるが,自分が習って今もつかっているものは,
嗅いで視る,動く車の三の外,顔,聞く舌の迷う副舌
読み方:古典的なものは下.
「かいでみる,うごくくるまのみつのそと,
かおきくしたのまようふくぜつ」
12の脳神経は,とにかく名前を漢字で書けるようになっていないとダメであろう.
念のために漢字で書いておく.
嗅神経,視神経,動眼神経,滑車神経,三叉神経,外転神経,顔面神経,聴神経,
舌因神経,迷走神経,副神経,舌下神経
反射は,脳関係の患者さんを診るときに,対光反射をみないことはまずない.必須の検査は二つ
対光反射:光を視神経でうけて,動眼神経で縮瞳
角膜反射,睫毛(しょうもう)反射:三叉神経で感じて,顔面神経で目を閉じる.
ちなみに,目を開けるは動眼神経.
追加)良く聞かれるのは,このうち自律神経系の神経を持っているのはどれか.そこまでは覚えなくても,患者さんはみれる.
副交感神経が入っている神経は,動眼(3),顔面(7),舌因(9),迷走神経(10)
訳のわからん覚え方は「服交換は港区で」.(副交感は3,7,10,9)
また,聴神経みたいに,前庭神経と聴神経の二本をまとめて「第8神経」と呼んでいる.そこにみえる神経の束を便宜上,○○神経と呼ぶので,それには各種の,要は,運動神経,感覚神経,副交感神経など機能的にはわかれたものの集まりである.
聴神経というのも内耳神経とも聴平衡神経とも呼ばれるが,音を聞く蝸牛にある細胞からでる蝸牛神経と平衡感覚の前庭,半規管にある細胞からでる前庭神経に大別されるが,どちらも内耳道を通って「脳内」に入る.
舌下神経は舌を動かす「運動神経」であるが舌を動かすだけではなないが,さらに詳しい記載は,ほとんどされていない.
また,混乱しやすいものに,舌咽神経と舌下神経のほかに,三叉神経の枝のひとつ.第3枝の下顎神経の中に,「舌神経」というものがあり,舌の後ろ1/3の感覚神経である.その舌神経には,顔面神経の枝(鼓索神経)も合流して舌の前2/3の知覚と味覚を司る.ということで,顔面神経自体もすべてが運動神経ではない.
不必要なネタ話:要は,脳神経は,解剖学が勃興してきた中世以降になってから名付けられたもの.
というのはキリスト教は人体解剖を禁止していたので,延々と脳に関しては知識は集積しなかった.
2)意識レベルについての基本的知識
これは,いまだに教科書もJCS, GCSばかりである.
GCSは1974年,JCSは1975年にできたものだったと記憶している.
意識レベルは,脳外科関係の医療従事者にとって最も大事.
たとえば,SAHの予後は,意識レベルに比例するので,「意識レベルはどれぐらい」というのが基本の情報伝達になる.
意識レベルは
1)外からの刺激なしに開眼している.ヒトケタ
2)外からの刺激で開眼する.二ケタ
3)外からの刺激では開眼しない.三ケタ
の3段階にわかれる.
世間のヒトの「意識はある」は,せいぜい1)と2)の上半分である.
脳外科で心配なのは,3)のレベルの中で,どれぐらい意識が悪いかである.
自分も学生の時には,意識は「ある」か「ないか」のどちらかであろうと信じていた.意識レベルが徐々に落ちてくるなどは,考えたこともなかった.
さらに学生さんに必須の知識は,
「見当識」「失見当識」の単語の意味である.
time, place, personを理解しているかどうか.
自分は,今,誰とどこにいて,今は何時頃というのは無意識に理解している.
「時間」「場所」「人間関係」が典型的な質問.
典型的な質問は
「今日は何月何日ですか」
「ここはどこかわかりますか,病院ですか,自宅ですか」
「となりにいるヒトはだれかわかりますか」
授業のネタとしてはしゃべるが,いまだに印象としては,あまり普及していない.日本が2002年に作った,100,200,300を細分化したEmergency coma scale.
これを今の今,学生さんに覚えてもらう必要性は,個人的には感じていない.
IIIけたの「覚醒しない」レベルを,運動反射の違いで意識レベルをみると言うレベルを少し詳しくしたもの.
これは割愛.
3)脳の解剖
大学2年生なら,脳幹はどこですか,「延髄,橋,中脳」です.と答えられたら十分である.視床はどうですかとなると,視床は一応「間脳」にはいるので,除外している本が多い.
硬膜,くも膜,軟膜はあわせて,「髄膜」と呼ぶ.
脳脊髄液はくも膜の下に充満している.などです.
硬膜のことは「硬髄膜」と呼び,くも膜,軟膜を「軟髄膜」と呼ぶというのが,もとの呼び名らしい.髄膜炎というのは,この膜にばい菌,ウィルスがはいったもの.
それをしらべるために脳脊髄液を腰椎穿刺で採取する.
まあ,盲腸炎の場合,右下腹部が痛くて血液中の白血球が増えていれば,疑われる.
それと同じ理屈で脳脊髄液中の細胞数が増えれば髄膜炎となる.
4)頭部外傷
これは,毎年毎年同じで,ほとんど新ネタがない.
慢性硬膜下血腫,急性硬膜下血腫の原因の違い.受傷機転の違い.
直撃損傷,対側損傷の違い,
ところで,直撃,あるいは直接損傷は,なんとなく,ぶつけたところの内側に脳がぶつかって脳挫傷になるのは,普通に理解ができる.
それでは対側損傷はどうしてなるのか.
それは,ぶつかった方に脳も慣性の法則でそのままぶつかる.
そうすると対側には,隙間というか,脳脊髄液の空間が広がる.そこは急激な陰圧になる.
それで,直撃の部分よりも,さらに強い力で反対側に戻るときに脳が頭蓋骨に当たる.
それで,直接打撲の部位には脳挫傷がなく,その対側に脳挫傷ができることがある.
それが「右を打って左に」「前を打って後ろに」脳損傷ができる理由です.
急性硬膜外血腫,脳挫傷,外傷性くも膜下出血,脳振盪,逆行性健忘
びまん性軸索損傷,頭蓋骨骨折各種など
とりあえず,上げておく.