脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 32回目 2019年5月20日

研修医のための症例説明会も久しぶり.
先週の予定の時間は,開始直前にコーヒーをこぼして,バタバタしていて出来なかった.
かわりに,5月21日(月)の18時から30分だけ行った.

本日の症例1 60才代 男性 穿通枝梗塞とNCSE

急にしゃべらなくなったと救急搬送された.
前回,後大脳動脈の梗塞の時にけいれん重積で入院.
今回は,○○時▼▼分から構音障害となったと救急搬送されてきた.
それが3日前から,おかしかったとの話.
前回の麻痺の時より麻痺の程度は同じ.
抗てんかん薬はずっと内服していた.
救急外来では,失語(運動性)がある.
しかしMRIでは右の脳梁に新しい小さな梗塞があるだけ.
抗けいれん剤の点滴を開始した.
入院した当日に,急に普通にしゃべり出した.
ということで,けいれん重積状態であったと判明.
今,はやりの「非けいれん性重積けいれん」である確率が高い.

本日の症例2 80才代 多発脳塞栓

行動異常とのことで外来受診.
一ヶ月前に転倒したとのこと.
慢性硬膜下血腫と考え,MRIの待ち時間にCTを撮ると左の脳梗塞がある.
しかしMRIを撮ると,両側に多発の脳塞栓である.
来院時 Af(-)であった.
経胸壁の心エコーでははっきりした心臓内血栓不明.
Shaggy Aortaなのか,とにかく心臓のCTAをしてみないとはっきりしたことは言えない.
症状は「急に食事が自分で出来なくなった」「ベッドサイドで排尿」「服を足ではこうとしていた」など,家人からしたら「突然の認知症の発症と増悪」と写った症状.
麻痺がないと脳梗塞は考えにくい.ましてや異常行動となれば脳梗塞を考えることは一般人も医療人も考えにくい.

本日の症例3  80才代 脳室炎

順番に感染.
高齢者なら,ありえる感染.
施設入所の方.
最初はインフルエンザ,その後は肺炎.抗生剤の内服を処方されていた.
その人は意識が低下していた.
MRIを撮ると,脳室炎なのか脳室内に膿汁あり.
腰椎穿刺してみると典型的な細菌性髄膜炎のデータ.
要は,蛋白がものすごく高値,糖はものすごく低値,6 mg/dl しかない.
細胞も好中球が99%.
水頭症にもなっているような.
治療法は,
1)点滴の抗生剤を開始.
2)徹底的にするなら脳室ドレナージか腰椎ドレナージをして抗生剤で洗浄,改善すれば,次は腰椎-腹腔シャント術になるであろう.
しかし,医療的には「診断と治療」が大事.
インフルエンザから肺炎はよくある.肺炎で亡くなる方も多い.
自分の父親も4人部屋でインフルにかかった.しかし肺炎になって命を落としたのは自分の父親だけであった.他の3名は,インフルだけで改善した.要素は年齢と元々の状態であろう.現実的な対応としては,施設入所で全介助だったヒトにどこまでするかという別の問題がある.高齢者のインフルから肺炎,さらに脳室炎,そのまえに髄膜炎があったのであろう.要は三次感染ということになる.脳は閉鎖空間で働くコンピューターみたいなもの.最後の秘密兵器みたいなもの.そこまで細菌にやられると言うことは免疫力も含めて,最後の状態であろうと思われる.

 

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