脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 26回目 2019年2月26日

もう忘れたが,備忘録なので書いておきます.
変わった患者さんは結構きたものの
2月はほんとに一切,手術が無かった.

本日の症例1 80才代 帯状疱疹後三叉神経痛
テグレ酔いで転倒

数日前に内科に受診.右前頭部痛.前額部痛.
ひたいを診ると,水疱がある.他の医師が,ゾビラックス内服と
テグレトール(100)2錠朝夕を金曜日に処方.
当日,翌日は症状無し.2日目の晩にフラフラして風呂場で転倒.
頭部打撲と肘を切って受診.
CTでは両側の硬膜下水腫がある.
確か日曜日の晩で,医局で自分はスライドを作っていた.
ただ滑っただけと思って話を聞いていた.
火曜日の晩に足が動きにくいと来院.若い先生がCTを撮って
水腫が拡大?との相談.
ポイントは,「水腫は,もともとあったもの」
歩き方をみると,ぐらぐらしている.不全麻痺の歩き方ではない.
聞いてみると,「薬を飲む前はこんな歩き方はしていなかった」と息子さん.
すでに5日間内服.
右前額部の痛みは,ほぼ消失とのこと.
夕食後に飲む予定からのバルトレックス,テグレトールは全部中止へ.
翌日水曜日午前中に受診.
驚いた.スタスタ歩いて診察室に入ってきた.
前日の夕食後と今朝のテグレトール内服をしていない.
やはり答えは「テグレ酔い」でした.
投薬量は少ない方であったと思うが,薬は,あうあわないの問題があるので,
この人は,そうなったということ.
金曜日にMRIを撮ってみて,水腫は段々血腫に変わっていくかもとの心配はあるが,とりあえず帯状疱疹後三叉神経痛は終了.
両側水腫は2週間後にCTを撮る段取りとなりました.

本日の症例2 80才代 急性硬膜下血腫

1度転倒,その3日後にもう一度転倒.
これは,外傷は脳CTは3方向撮っておいた方が良いという症例.

テント上の硬膜下血腫はaxialではわかりにくいが,前額断で非常によくわかる.小脳テントの上,大脳の下に1.5 cm幅の硬膜下血腫を認める.
円蓋部にもあるが1 cm程で,脳萎縮があるために脳は圧排されていない.
歳の功で症状無し.認知症は完成している.

小児の外傷の時でも,axialの画像では血腫が無いようにみえて,
実は,前額断でテントの上下にうっすらと血腫があることはままある.
脳振盪だけの病名から「急性硬膜下血腫」が追加になれば,きちんとした診療になる.

本日の症例3 60歳代
アルコール性浸透圧性脱髄症候群

アルコール依存症で,ビールを沢山飲むヒトに多い.
ビールは水分なので,電解質が沢山ある血液とは異なる.
入院してきた状態は,会話もできるし,立ち上がることもできる.
ビールは毎日10本,さらに日本酒2合が基本.
その上に何を飲むかという方.
画像は橋全体がMRIの各条件で「浮腫」がある形に見える.
入院して3日もすると,無動性無言のように寝ている.
構音障害,嚥下困難,弛緩性四肢麻痺状態.

初日に診察したときは,まだ立てていたのでMRIがよく分からなかった.
慢性のアルコール依存症では,コルサコフ症候群が有名であるが,
その病変は,MRIでは第3脳室周囲,中脳被蓋,第4脳室近傍などで,
血中のB1,B12, 葉酸も測定したが,全部正常範囲内.
中脳近傍の障害の場合はB1(チアミン,サイアミン)の欠乏で出やすい.
どうもB1依存性の細胞活動をしている部分の障害が出るとされている.
しかし,それは血中濃度も画像も否定.
要は,central pontine myelinolysis (橋中心性脱髄症)が起きている.
原因は40%がアルコール依存症におきる.特にビールを大量に飲むヒトに多い.
要は,慢性低ナトリウム血症になって,急速補正になった場合に起きる.
あるいは単純に細胞外液が内液に比べて相対的に高張になった場合におきる.
それで,「浸透圧性」と呼ばれることになる.
「浸透圧性脱髄症候群(osmotic demyelination syndrome: ODS)
が一般名である.

この方は,一時的に低血糖になったことがあるらしい.
それの補正でなってしまったのか?

またアルコール,特にビール多飲者での脱髄性疾患としては,
日本では30名しか報告がないが,脳梁膨大部の脱髄になる
Marchiavfaba-Bignami症候群というのもある.
治療には「脱髄疾患」全般にいえるが,ステロイドのパルス療法である.
DM合併していると大変な印象.

まあ,内科に入院していて,脳外科に相談があったが,自分はpontine gliomaを疑って造影したが,全く造影されず,答えに結びついたと言う次第.

 

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