2021年2月の研修医は1名だけ.
その一週間前に説明したのは,機会があれば記載.
今回は詳しい,資料付きで画像を見せてあげた.
症例1.70才台,アルツハイマー病,急性硬膜下血腫,慢性硬膜下血腫,外傷性SAH
調べると,アルツハイマーの高齢者は通常の高齢者より頭部外傷の率は50%高い.
夫が少し目を離した隙に外へ徘徊に行き,転倒し救急搬送された.
両側前頭葉に慢性硬膜下血腫,側頭葉に比較的大きな急性硬膜下血腫+Sylvius裂に結構な量のSAHあり.
皆の期待は,「慢性硬膜下血腫を手術すれば,徘徊などはなくなるか?」であった.
自然経過で入院中に急性硬膜下血腫もSAHも消失.次は慢性硬膜下血腫も消えた.
徘徊は続く,MMSEなどのテストも0点のまま.要はすでに完成形.
脳外科が関与できる部分は無し.
お勉強になったのは,この方のMRIはラクナ梗塞もなければ,「慢性虚血性変化」もない.
いわゆる,深部白質病変も全くなし.両側海馬の萎縮が顕著なだけ.
そんなこんなで,アルツハイマー型認知症の典型例でした.
廃用性筋萎縮のために転倒しやすいが,歩容は普通である.ギクシャクした歩行ではない.
症例2 60才台 脳多発微小血管障害
これは以前提示した.50才直前までは,フルマラソンが出来ていた方.
調べてわかったことは,ギクシャクした歩行,開脚,小股,失調性歩行は,両側多発のラクナ梗塞などで生じる.最初は,物忘れはない.徐々にアパシー,抑うつ,小声,構音障害,注意力低下,易怒性などが出てきて,物忘れも進む.
この方は,リン脂質抗体も(-),血管炎(-)であった.
遠因と誘因は,高血圧と大量の飲酒ぐらい.
この方は「調子が悪い」と受診してきた際のMRIでは,毎回新しいラクナ梗塞が出来ていた.非常に印象深い症例.
急激な増悪で,横紋筋融解症併発,誤嚥性肺炎となり永眠.
「血管性認知症」のほうが,アルツハイマー型認知症より,発症してからの進行がはやいとされているが,その通りの経過であった.
「走れなくなった」と受診してから,「3年弱」で永眠した.
症例3 PSP 70才台.
これは,過去に2回提示した.
進行性核上性麻痺と大脳皮質基底核変性症はまれであるので,お勉強させていただいた.
この方も直立,頚部後屈などで転倒して硬膜下血腫で脳外科に
ところで,日本の認知症は,どうなっているかといういうと,
アルツハイマー型:67%
血管障害型:19%
レビー小体型:5%
前頭側頭型:1%
アルコール関連:1%
混合型: 4%
他:3%である.