脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 84回目  2021年4月23日(木)

久しぶりの研修医向けの症例検討会.
なかなか,出来なかったので,なんとかしないと.
今月は一人だけなので,できるだけ

症例1 70歳台 左慢性硬膜下血腫

最近の慢性硬膜下血腫の患者さんは,頭痛を訴えることは少ない.
それは高齢者が多いため.
この方は,頭痛が強い.脳が萎縮していなく,ぎゅうぎゅう詰めだったのが原因.
比較的少量に見えたが,穿頭術をすると,結構な血腫量であった.
頭痛は手術直後から,完全に消失.

ところで再貯留予防に,最近はアドナ,五苓散を良く処方する.
アドナは眼底出血の再出血予防に良く出されるが,血腫被膜の微小血管からの出血と眼底出血の出血は形状が似ているらしい.そこからヒントを得て,アドナを処方するようになったと聞いたが,本当かどうかは不明.
五苓散は,五つの成分があるから五苓散で,沢瀉(タクシャ)、猪苓(チョレイ)、蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)である.利水剤としての効果はそのうちの一つが働いているとのデータがあった.慢性硬膜下血腫の血腫被膜を用いてその物質を投与すると外へ水分が出ていく実験がある.それらから,慢性硬膜下血腫の水分を外へ出すことが証明はされている.どの成分なのか忘れた.その中のMgが作用を発揮しているらしい.個人的には自分が眩暈がしたときに内服したら,尿量の増え方が大変であった.
朝一回でも高齢者なら再貯留予防に十分ではないかと思った.

症例2 70歳台 後大脳動脈の出血性梗塞

急に漢字が読めなくなって受診.ものの使い方が分からないなどもあり.
その前に,一時的に意識消失があった.発症して2週間弱で来院.
要は独歩来院,意思の疎通もできる.まわりは認知症がおきたのかと思ったか.

「漢字が読めない.ひらがなは読める」という症状,
MRIを撮ると,左後頭葉の出血性梗塞.
一般的には,後頭葉下部の失読失書は,「漢字」に選択的である.
正確な病巣は,中部紡錘状回,下側頭回後部.
下側頭回後部は,「視覚性語形領域(visual word-form area)で,
単語の視覚イメージの貯蔵部位.
今回は,漢字がかけない,よめない.ひらがなは読めるというタイプで発症.

これは,下記に解剖学的な部位が記載されている.

https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/051080567.pdf

後頭葉底面の内側は「ひらがな」の失読,
その外側の部分と側頭葉の底面は「漢字」の失読らしい.
なかなか,それのみで発症するヒトは少ない.

それと,後大脳動脈の脳塞栓の原因は何か.
心原性でAf,ボタロー管開存症などからか.
要は,なかなか「塞栓源がわからない,ESUS」と呼ばれるモノが多い.
この症例では,心エコ-,ホルターともに異常なし.
頚部血管エコーのついでに腕頭動脈の起始部,鎖骨下動脈の起始部を見てもらうと
そこにデコボコのプラークがあることが判明.
ということで「動脈原性脳塞栓」であったと判明した.
それで,再発予防には「抗血小板剤」になる.

これは,以前にも書いたが,「心原性」なら「抗凝固剤」
「動脈原性」なら「抗血小板剤」の使い分けになる.

症例3  70才台  小脳出血性梗塞

頭痛で発症.というか,その前にめまい.数日後に頭痛.
さらに数日後に受診.
首を振ったら頭痛がするとのことで,CTを撮ると小脳下面にlow denseの病変がある.
MRIを撮ると,なんと小脳下半分に一部小葉の形に出血した塊?.
占拠性病変のように周囲を圧排している.しかし右VAは写っていない.
さらに翌日に造影MRIを撮ると,全く造影されない.
しかし,右のVAはMRA(MR脳血管撮影)では写っていないが,元画像でみると間違いなく開存している.ということで,「右VAの脳塞栓後に遅れて再開通して,漏出性の出血を来した小脳出血性梗塞」と判明した.
結果は小脳腫瘍などではなくてよかったが,原因は何か?
症例2と同様の検査を行っている最中である.
これもESUSに入るが,どうなるか.再発予防にどの薬を使うかである.
本症例は頭痛が主訴なので,出血性梗塞による周囲の圧排による頭痛なので,グリセオールが必要.狭い場所なので頭痛が出たと思われる.

症例4 60才台 無症候性内頚動脈閉塞,
右頭頂後頭葉皮質梗塞

検査をして,偶然発見された.まずは右内頚動脈が起始部で完全閉塞.それに伴う血行動態的な右後頭葉-頭頂葉部の皮質の梗塞.それは無症状,丁度,症状が出にくい場所であった.右中大脳動脈は,AcomAを介して,左から栄養されている.飲酒,喫煙かなりあり,印象としては,「なるべくして,なった」である.
研修医の先生には,「頚動脈がつまって,すでに脳梗塞になっているヒト」に何を説明して,何を処方したら良いかである.
まずは,動脈硬化になる危険因子の喫煙,飲酒,塩辛いモノを食べるなどを改めてもらう.
次は,血行動態的な脳梗塞の発生をさせないようにすること.脱水にならないようにする.
抗血小板剤を内服するなどである.
また頚動脈エコーは「動脈硬化のサロゲートマーカ-(代理指標)」なので,他の部分の動脈硬化も進んでいることになるので,その精査もしたほうが本当は良い.

以前もVA解離後4日目に,MRIで無症候性ラクナ梗塞が起きたヒトが,結局は心血管も細いことがわかり,ステントをいれることになった.

症例5 80才台 左被殻出血

1.3cm程度の小さな被殻出血.右側に転倒して口腔内からの出血で来院.来院時は麻痺もない.脳出血で右麻痺が一時的に出現し,倒れたと思われる.結構,外側の出血だったので,周囲の浮腫が落ち着いてきたら終了.倒れた時の記憶無し.大脳皮質に近いので「症候性てんかん」になるかも,今回もてんかん発作なのかは不明.
80才台だが,90才目前なので,物忘れがあるとのこと.
MMSEでは25点と,年齢を考慮すると上等であった.
引き算の問題ができなかった.
「100-7は,そこから7引くと」で順番に7ずつ引き算して,最後は2になる.
正常な人は「30秒以内」にできるとのこと.

なんとか,久しぶりに書けた.

 

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