脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 77回目  2021年1月5日

新年はじまって忙しい中,20分ぐらいだけ出来た.
忙しい.

症例1 70歳台 PSP,後頭部打撲 硬膜AVF

この方は,進行性核上性麻痺なので,病態が進行すると,頚部後屈が出やすい.
入浴中に足を少し上げたら後方に転倒,後頭部打撲,コントラ・クー損傷で,右前頭葉に脳挫傷あるため,入院.この人は後方にこける.そのためか,1年前のMRA(MR脳血管撮影)ではそれほどでも無かった,左後頭蓋窩に硬膜動静脈瘻が出来ている.今回はその話.
後頭蓋窩の硬膜枝はどこの血管からか.
外頚動脈からの枝の後頭動脈か,椎骨動脈からの後頭動脈か.
どちらにしても,まずは画像でフォローアップ.
SAHなどになれば,塞栓術でその部分を止める.
それでも再発してきたら,直達手術で硬膜自体を切除するか.
OAだけならその入り口を凝固,結紮,切離すれば良い.
年齢,状態からしたら,SAHなどになれば処置をするかであろう.
CTAを撮った方が良い.それで,後頭動脈(OA)だけなら,局麻でOAを直視下で結紮すれば,ほぼ問題ない.その後に小さな血管がまた育ってきたら再検討というところ.

症例2 90歳台 Diffusion/FLAIR mismatch

これも,以前に提示した気がするが,左中大脳動脈塞栓.
tPAの歴史は,それなりにおもしろい.
最初に発症3時間以内なら,血栓溶解できると結果を出したアメリカ.
その当時,6時間ではどうかなど,ヨーロッパなどでも検討がされていた.
もちろん日本でも4個の治験が動いていた.
しかし,日本は「良い結果」よりは「非常に悪い出来事が起きない」ことを重視する国民が多く,1例かどうか,極めて大きな副作用,要は出血性梗塞がでて,治験が止まったという経緯がある.そのために,1996年にアメリカで認可されたものが,2005年と10年ぐらい日本は遅れた.しかも米国での使用量は0.9mg/kgで日本の使用量は0.6 mg/kgと2/3の量しかない.それで致死性の出血性梗塞がへったので,日本としては,それで良い.
ヨーロッパは6時間のトライアルで有意差を出せなかったので,めげずに3-4.5時間のヒトに投与したらどうなるかを検討した.10%がた予後良好例が増えたので,2012年に4.5時間以内が認可された.
さらに画像からのdiffusion/FLAIR mismatchが適応基準として出た.
wake up infarctionは脳梗塞の20%にあるもので,時間が不明の時に,diffusion画像では1時間で出る.FLAIRは3時間で出るとのことで,FLAIRで出ていなければ,3時間以内かわずかな側副血行路があるかである.
画像を根拠にtPAを使うかどうか.「使用を考慮しても良い」という「使う方の責任」という文言になっている.

この方は90歳台なので,diffusion/FLAIR mismatchもあるし,左中大脳動脈塞栓なので溶けるだろうと考え施行した.無事再開通.出血もなし.

しかし,若返りの薬はないので,急激に筋萎縮などがきて寝たきりになってしまうことが多い.

 

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