脳外研修医カンファ

研修医のための脳外科カンファ 64回目 2020年6月29日

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今回は,基礎知識のあまりない研修医の先生であったため,
変わった症例を提示して説明しても,かえって混乱して
理解度が下がる.

今回は,基本的な症例3例提示

症例1 90才代,外傷性くも膜下血腫 テントエッジ,硬膜下水腫

Case 1 90’s  traumatic SAH,  tentorial edge,   subdural hydroma

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40 cmほど転落して受傷.
海馬の横に外傷性SAHがある.
なぜこんなところにSAHがあるかの説明.
正解は,テントのヘリ(edge)に脳が当たって脳挫傷および外傷性SAHとなるため.
この方は途中で硬膜下水腫になり,慢性硬膜下血腫になりそうになったが,
途中から吸収されて独歩退院.

徐々に大きくなる硬膜下水腫はどうなるか.
「血腫になって脳を圧迫してヘルニアになる」ということは,
まず無い.
その理由: 脳萎縮がある場合は多いが,
脳脊髄液はくも膜下腔に貯留している.
それで,薄いくも膜が裂けたら,脳脊髄液はその外に出る.
脳脊髄液は脳室内の脈絡叢から血圧によって,漉し出される様に
しみ出してくる.そちらの圧が伝わって,穴の空いたところから外へ出る.
それで,徐々に硬膜とくも膜の間に脳脊髄液がたまる.
これが「硬膜下水腫」というもの.
くも膜が裂けただけの小さな穴の場合,
全く静脈性の出血がないことがある.
しかし硬膜下水腫側に最初は圧差で入っていっても,
いずれそちらの圧も上がる.
そうなると,硬膜外血腫とくも膜下腔側の圧が同じになる時がくる.
そうなると,そこで,均衡状態になって,
それ以上は硬膜下水腫は大きくならない.

これは,血腫被膜ができて,
そこから血液が漏出性に出たり止ったりする.
慢性硬膜下血腫の機序とは全く異なるもの.
まあ,それらも説明しました.

というのは,研修医の先生は,
放置すると大きくなって脳ヘルニアを起こすと返答したため,
「硬膜下水腫」がそのような動きをすることはないと説明したので,
記載した.今まで,あまり意識はしていなかった.

症例2 80才代典型的な脳挫傷性血腫 SAHから大きくなる.

坂道で転倒して救急搬送された.
入院時のCTでは左側頭葉上部の1cmの厚さもない,脳表のSAHと言ってよい
程度.会話も出来ていた.
翌朝には発語無し.右上下肢麻痺出現.
翌日のCTでは脳表の3-4cmの脳挫傷性血腫あり.
抗血小板剤などは内服していない.
脳表なので,局麻で血腫を吸引しても良い状況.

画像からだけの診断なら,別に内視鏡でなくても脳表なので,
burr hole自体を少し大きくして1時間もあれば,出来たであろう.

問題は,「10秒前のことも忘れる」という方なので,
早くもとの認知症に戻すのが大事かどうかなど悩ましい.
後は経済的な問題など,脳外科医師としてよりは
世間の常識人としてどう考えるかという症例.

症例3 70才代 被殻出血 手術適応.
ブローカとウェルニッケの場所.

Brocaの中枢はどこですか?
前頭葉の中の下前頭回の後端.
大脳の溝が脳を横からみると前から中心溝に向けて
2本上下に走っており,それで上前頭回,中前頭回,下前頭回と分かれる.
それより後ろは溝は上下に走っている.
CTの側面像では,中心溝,さらに中心前溝の前で,下前頭回の後端.
まあprefrontal cortexの後下端という場所.
2cm四方の場所.
「前前頭野の後ろ下の端」である.
要は,前頭葉にある.
Wernickeの中枢はどこですか?
これは上側頭回の後端が正解.
周囲の頭頂葉,側頭葉などは「言語のサポートをする部位」
要は,側頭葉にある.

手術適応は被殻出血の場合,簡単な略式で,
計算できる.
脳CTの水平断で一番,血腫が大きく写っているスライスを見つける.
それで(1)前後径 cm (2)左右径 cm

を測定する.
それに血腫が写っているスライスの幅(5 mm, 7 mmなど)を考慮して,
写っている枚数を数える.
5 mm sliceで7スライス写っていたら,3.5 cmとなる.
そうなると,(1)×(2)×(3) ÷2 =(大体の) 血腫量となる.
それで被殻出血の場合,30 ml以上が手術の絶対適応である.
まあ,これがISLSなどの本に載っている.

現場で簡単に分類.
最長径が5cm四方なら絶対適応.開頭あるいは内視鏡血腫除去術
最長径が3cm 四方なら保存的加療.
その間の3-5cmなら,状況に応じて,手術あるいは定位的血腫吸引術あるいは,
内視鏡で吸引術をするかを考える.

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