人間,社会人,家庭人,地域人,医師としてのセカンドライフ

セカンドキャリアを考え始めた時期 

2016年10月から赴任してきた新しい病院.
いろいろな病院で働いてきたということは,いろいろな上司がいたということ.
その中のひとりの上司が60歳代後半で脳外科常勤から引退.非常勤に.
子育てが終わって,子供も働き出した.
次は,年老いた両親の面倒とか,私生活の役割の変化に伴い,
いつかくる.ファーストキャリアの卒業.
その後を継ぐように今の病院へ.
自分は,50歳後半でこちらの病院に赴任.

まあ,年齢を特定すると,良くないことも起きるので,
表現に幅を持たせることにした.
例:
40歳前後=39,40,41
40歳前半=42,43 (時に41歳を含む)
40歳半ば=44,45,46
40歳代後半=47,48 (時に46,49歳も含む)
これで次は,
50歳前後=49,50,51歳となる.

以前の病院では,上が沢山いたので60才前でも「中堅」扱いされるので,気持ち的には若かった.専門病院なので,年齢は高めである.
まあ,都合の良い患者さんだけをオペするような上司に,研修医なら我慢もするだろうけど,他のスタッフクラスの医師達はどう思っていたのか.
潮時を考えない医師というヒトもいると思う.
自分が手術が出来るようになったら,しばらくは自分がする.しかし,段々と若手に譲って,最後は完全に手術は譲るときが来る.要は,手術に関しては「手を洗わずに足を洗う」時がくる.
それをズルズルと引き延ばすしするとか,セカンドキャリアを考えられないと困ることになる.「手術だけを頑張って来た脳外科医」は世の中に多く存在している.

具体的には,自分の外来で,未破裂中大脳動脈瘤の患者さんを1年ごとのフォローアップをしていた.自分が3年みた.次の年は,偶然,用事が重なって脳外科のトップが診た.自分はすっかり忘れていた.ある日,ICUに行くと未破裂脳動脈瘤の術後患者さんがいる.回診をしていたら,本人が「3年間は先生に外来で診てもらった.今年は違う先生だった.大きくなっているからオペが必要と言われて,した」
と手術翌日の話.
「・・・・・・(考え中)」
術前カンファレンスも週に2回あるが,昨日の手術のヒトが私の外来でフォローしていた患者さんであったとは,トップはひとことも口に出していない.自分はオペが済むまで知らなかった.若手にクリップをさせてあげて,横からアドバイスしたわけでもない.自分が全部している.
脳外科の開頭ネッククリッピングも件数が急激に減っている時期.
その病院では,多いときは年間90例ぐらいの開頭クリッピングを行っていた.近年になって「開頭によるクリッピング」は年間50件ぐらいに減少.内訳は破裂が15件,未破裂35件程度.血管内手術の台頭もあった.血圧の管理も皆している.それに未破裂脳動脈瘤のUCASーJapanのデータも揃いつつあった時期,あまり開頭術が積極的に勧められない状況に変わりつつあった.
要は「直の部下が今まで外来で診ていた手術患者を直の部下には黙って,自分で手術をした」ということ.
未破裂の中大脳動脈瘤のクリッピングなら,自分でも出来るし,トップにとってもなんでもなかったであろう.
3時間もかからないので,体力がおちて,夜中のオンコールからも当直からも外してもらったトップの医師でも出来る手術であろう.
手術がしたかった気持ちは分かる.「俺は今でも出来る」などと納得したかったのであろう.最後のあがきにも近い.
そのことが直接のきっかけになったわけでは無いが,その頃から「ファーストキャリアの終焉とセカンドキャリアへの移行は真剣に考えないといけない.次は何が来るかを見極めないと,昔の芸しかできない終わった芸人みたいになる.垂直関係が強い組織では,そのようなヒトは老害と呼ばれる日が来るであろう.自分はどうしたらよいのか.」と徐々に漠然と思い出しはじめた.
夕日をみながら,切って切ってきりまくる時代が終わったのを実感するお侍さんの姿が見えた.

芸能人のほうが,当たり触りが無いので書いておく.
「芸能人が,若手アイドルから俳優としてセカンドキャリアを変えたりは多い.そこで伸びなければ,○○のこだわり芸能人みたいにニッチな分野で生き残りをかけているヒトも多い.
かつての「ヒロシです.」と言うネタのヒトは,今はyou tubeでキャンプの情報を流している.すんなりと,そこにおさまった分けでは無い.
「今でしょ」の先生も豊富な国語の知識と穏やかなしゃべり方でTVに定着している.日本長期信用銀行に入行して5ヶ月で退社したのは有名だが,その後は,長期間,かなりの苦労を強いられている.予備校教師になる前の記憶は本人も無いぐらい自信喪失していた時期があったような.

自分もファーストキャリアも終わりつつあった50才前後から,考えることが多くなっていた.

その前に,もう一つの自分のファーストキャリアは,ほぼすでに終わっていた.
自分は,1998年から2000年秋まで大阪の場末?の福祉法人の病院で働いていた.人口が多いので,それでも年間3000台の救急車が来ていた.そのときに救急学会に入った.1999年の話.2004年には新しくできた救急救命センターで働くことになった.ヘリコプターにも載った.
40歳代後半で「地上勤務」に戻った.
その当時の医療行為で救急の専門医を取ったのは50歳前後.
脳外科,救急の両方の専門医を取った.その間に頭痛学会の専門医も,脳卒中学会の専門医も取った.
脳外科の専門病院に戻ってきて,多くの人が勘違いをしていることに気がついた.
救命救急センターで働くということと,二次および専門病院で急患を一杯診ることは同じと思っている医師がたくさんいること.
本質的に見ているものが異なるように自分は感じていた.
救急隊との連携,連日の多人数の患者の割り振り,他科との相談,他院との連絡,災害時の対応,トリアージの実際など,「一般病院の急患対応」の医師には縁のない分野がたくさんある.一般病院,専門病院の救急では「今は手術中」で断るのが普通だが,救命センターでは無理矢理それを取って対処して,「次の手術」として対応していく.考え方自体が違う.
それを指摘しても,一般病院では人的資源としては無理なので,自分も何も言わなかった.

まあ,知識の無い人が「年号をいくつ覚えたら博士になれるのですか」と「ローマの古代史が専門の教授」に質問したらしいが,知らない世界に対しては,そんな感じの思い込みがたくさんあることは,そちら側の世界に行ったことがある人でないとわからないと思う.

脳外科と救急の専門医の違いは,普通に話をしていても気がつく.
脳外科医は「宮大工」みたいな印象.とにかく一つにこだわる.それは途中まで完璧でもクリップの形が合わず,手術中に動脈瘤が裂けたりすれば,手術全体が木っ端みじんに吹き飛ぶことを知っているから.
「こだわりの職人さん」という感じ.
解剖学が大事.血管の走行,脳の局在,脳神経との位置関係,頭蓋骨の構造など3次元的な理解が必須.

救急の専門医は「長屋の差配人」の様な印象.多くの長屋のヒト達をまとめて,一つの問題や別の心配事を,あの手この手で解決しないといけない.他の長屋の人とも連絡を取って,全体として,いつも対処出来るように常に見張っている.脳外科に頼むときもある.急変した場合の対処法は,動物としての人間を助けるので,イヌ,ウシが急変した時の対処法と同じ.連続的な変化について行くことが出来る人.大事なのは,解剖学ではなく,生理学.どうやって維持させるかにすべてがかかっている.

自分は,どちらの立場でもなんとかこなしていた.しかし,救急医療の最前線からは徐々に引いていったことになる.50歳前に救急科の専門医を取ったのは,帰ってきた専門病院の希望でもあったし,自分も記念と思って取っていたので,それなりに役だった.しかしヘリコプターにも乗らず,発症および事故現場で挿管などもしなければ,段々と現場感覚は薄れていく.2016年に50歳代後半に今の中小都市地域医療提供病院にきたら,救急の最前線で働いていたキャリアは,ほぼ終了.イメージとしては参議院議員から前参議院議員になって,今は元参議院議員に立場が変わった感じで,二つ前のキャリアになる.
お疲れ様でしたと自分に言いたい.

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