毎回,毎回,変わった症例を提示しているが,
今回も3例,研修医のために説明した.
本日の症例1 50歳代 前大脳動脈解離性脳梗塞
右上下肢麻痺で運ばれてきました.
前大脳動脈領域の脳梗塞.MRA(MR脳血管撮影)画像上は,ACA (前大脳動脈)が3本みえる.
右からは二本のACAがでており,これがメインの様.
左からのACAの一本は,上方に曲がった部分で途絶,そして2cmぐらい先で再び,写っている.
前交通動脈の分岐部あたりが一番バリエーションが多い.沢山のパターンがある.
3本のACAの場合も多い.脳梁動脈と呼ばれる the artery of the corpus callosumが多い.これは二本のACAの間の前交通動脈から出ることが多い.
あるい左右が合わさった,大きな1本のみの奇動脈も有名.
この方は,右から普通に2本がでている.
左からそのまま3本目の動脈が上方に向いて流れていくが,そこで血管壁が解離したものと思われる.
途中から,右上肢の麻痺,失語も消失.MCAは正常なので、手のマヒ、失語は治ると予想していた通りの経過。正中部の梗塞なので対側の下肢麻痺が残るかと心配していたが,それも改善して退院.時期を置いてCTAをしてみると左からのACAは,pearl and stringの形ながら再開通していたと判明.
本日の症例2 20歳代,片頭痛+アレルギー
真庭ならではの疾患? 真庭には,CLTという合成の木の板を作っている会社がある.
CLTはcross laminated timberの略。いろいろ詳しく載っている。
まあ、ひき板(lamina)を繊維方向が直交するように積層接着した厚い大きな板らしい。
CLTの説明
この方の場合、片頭痛は大学生の頃かららしい。真庭にもCLTを作る会社があり、それに興味をもって、仕事をやめて都会から帰ってきた。働き出して、木材を切ったりしたら、だんだん涙がでたりとしんどい。片頭痛も時に起きる。
予防薬、頓挫薬を処方。頭痛の時は、イミグラン皮下注と酸素投与で頭痛は改善するが、嘔気、結膜炎、鼻炎症状がでている。それで、スギ、ヒノキの抗体を調べたら、スギは150 倍、ヒノキに対しては200倍、正常より高い。
そこの工場は聞いてみると、スギ、ヒノキしか取り扱っていない。
本人に,その結果をプリントアウトして渡して,会社と相談してもらった.
本日の症例3 80才代 脳膿瘍からの脳梗塞
脳膿瘍はバンコマイシンで改善.
出来た場所も,運動領そのもので手関節より,先が動かない.
しかし,長期間のバンコマイシン投与でとうとう,造影MRI でも壁のみしかないかのように造影MRIで増強された.4日前のCTではみえなかった,小脳梗塞となっていた.
それで,気分不良,嘔吐がおきたような.陳旧性の小脳梗塞の瘢痕が見られるが,その近傍にまた出来た.おそらく,動脈硬化で狭いのであろう.
そのまえに膀胱炎,バンコマイシンをすでに3週間以上,充分量を投与していたのに尿混濁で,細菌3+とは一体なにがという印象.
高齢者は,多くの疾患を乗り越えてきたが,常に完勝ではない.
不整形の前立腺肥大もあり,そちらも検討する.
「脳外科の疾患だけを治療していたらそれで良い」時代は,
とうの昔に終わっていると実感する.
アップ日が、決まるのはありがたいですが、先生が苦痛にならないよう、御願致します。
1ヶ月月程前から読みだしました。
三年前に、前大脳動脈解離から脳梗塞になり、左麻痺で慌てました。
搬送されたのが、発症後4時間過ぎ。
中大脳動脈に、4ミリの動脈瘤がある為、未だ通院中です。開頭に踏ん切りがつきません。
関東の中規模市中病院で、救急科が別にありますが、脳外科の先生は、大変ですね。
お疲れ様です。